研究課題/領域番号 |
26293045
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
岡田 泰伸 総合研究大学院大学, その他部局等, その他 (10025661)
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研究分担者 |
岡田 俊昭 生理学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (00373283)
松浦 博 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (60238962)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アニオンチャネル / 心臓 / ATP放出 / 虚血・再灌流 |
研究実績の概要 |
多くの細胞は、種々のストレス下において細胞外にATPを放出するが、その経路としてはエキソサイトシス仲介のものとチャネル仲介のものがある。私たちは、後者チャネルとしてマキシアニオンチャネル(Maxi-Cl)が、心筋細胞を含めて多くの細胞系でこれに関与することを、これまで示してきた。また、最近私たちは、マウス乳腺由来C127細胞におけるATP放出を担うMaxi-Clの分子実体候補として、#4819.5遺伝子産物を特定することに成功した。そこで本研究では、心臓からの虚血・再灌流性ATP放出についても同様の分子が関与するかについて検討した。成熟マウスの摘出心ランゲンドルフ標本を用いての脱酸素・脱グルコース液灌流後の酸素・グルコース再投与による「虚血・再灌流」のモデル実験によって、虚血・再灌流性ATP放出が再灌流時に再現性よく見られることを明らかにした。次に、マウスにあらかじめ尾静脈より3日間連続して#4819.5に対するsiRNAをイン・ビボ投与したところ、コントロール実験に比べて有意に再灌流時ATP放出が抑制されることを見出した。これらの平成26年度における成果を踏まえ、平成27年度には次の実験を行った。まず第1に、この摘出心再灌流時ATP放出に対して、他細胞においてATP放出路を与えると報告されているパネキシン・ヘミチャネルの関与の可能性を、パネキシン特異的ブロッカーを用いて排除することに成功した。第2には、C127細胞におけるイン・ビトロ実験によって#4819.5遺伝子をCRISPR-Cas9法によってノックアウトし、Maxi-Cl活性の消失することを確認した。第3には、Maxi-Cl活性を欠失したマウスC1300細胞において、C127細胞に比べて著しく低い発現を示した細胞骨格系関連分子アネキシンA2 (Anxa2)が、Maxi-Clのレギュレータであることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度においては、イン・ビボ実験条件の設定に日数を要したために若干の遅れがあったが、平成27年度においては確立した実験条件のもとで数多くの実験を実施することができ、遅れを完全に取り戻すことができた。その結果、本研究の第1の目的である「心臓の虚血・再灌流性ATP放出における#4819.5遺伝子産物の関与の実証」を達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
論文投稿時に査読者によって求められたCRISPR-Cas9ノックアウト実験およびパネキシン関与排除の実験の追加を成功裡に終えたので、平成28年度においては、まず初めに論文の再投稿を行う。続いて、本研究の第2の目的である「心虚血・再灌流性放出ATPの病態生理学的役割の解明」の達成に向けて各種実験を行う。これにより、心虚血・再灌流性ATP放出が、虚血・再灌流性心機能障害に対して防御的に働くのか、それとも障害増悪的に働くのかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度期末近くの3ヶ月間においてATP測定器(ルミノメータ)が故障して使えなかったために、マウスや多種薬品の購入がその間できなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度期初において、別のATP測定器を入手することができたので、当初予定していた実験を集中的に行うが、その際のマウスや多種薬品の購入の費用に当てる。
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