概日リズムは一日の時間を予測し、明暗サイクルなどの外部環境に合わせて生体の代謝やホルモン分泌などの生理活動を調整しており、その乱れは肥満などのメタボリックシンドローム発症と関連する。食事のタイミングは肝臓の時計位相を変えることが知られているがその分子メカニズムは明確になっていない。本研究は、摂食時間の違いによっておきる遺伝子発現、及びエピジェネティックな変化を解析することで、摂食タイミングに起因する肥満形成と予防の分子メカニズムの解明を目指した。次世代シーケンサーを用いたRNA-seqにより制限給餌1週間後のマウス肝臓及び脂肪組織のトランスクリプトーム解析を行った結果、脂肪細胞分化や脂肪生成に重要な転写因子Cebpb、Ppargや褐色脂肪細胞での熱産生に関わるUcp1の発現には大きな違いはなかった。また、褐色脂肪組織と骨格筋における時計遺伝子発現はほとんど変化していなかったが、肝臓及び白色脂肪組織では位相や振幅が大きく変化していたことから組織特異的な遺伝子発現ネットワークの攪乱が関与していると考えられた。さらに、肝臓及び白色脂肪細胞で明期と暗期の制限給餌によって発現が大きく変化したそれぞれ約50遺伝子を抽出したところ、脂質消化吸収や脂肪酸代謝に関わる遺伝子が高く濃縮されており、肥満形成に機能していることが予想された。
|