研究課題
薬物依存やギャンブル依存の他、統合失調症などの多くの精神疾患において、意思決定の異常が認められるが、そのメカニズムは不明であり、有効な治療法も開発されていない。これまでに我々は、意思決定を定量的に解析可能なラット用ギャンブルテストを独自に考案し、覚せい剤依存誘発性意思決定障害モデルの作製に成功した。本研究では、Designer Receptor Exclusively Activated by Designer Drugs (DREADD)システムを駆使して、意思決定に関わる神経回路の機能と分子機構の解明を目指す。さらに、意思決定障害の治療を可能とする創薬標的の同定を行う。平成27年度は、メタンフェタミンを連続投与した覚せい剤依存モデル動物の意思決定障害に島皮質および大脳基底核の異常活動が関与していることをc-Fose免疫染色ならび行動薬理学的試験で明らかにした。さらに、島皮質の神経活動を薬理学的あるいはDREADDシステムを用いて操作することにより、正常ラットおよび覚せい剤依存モデルラットの意思決定を改変できることを明らかにした。また、数理モデル(Q-学習)を用いて覚せい剤依存ラットの意思決定障害の心理学的メカニズムを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
当初計画通りに研究成果が出ており、すでに国際誌 Proc Natl Acad Sci U S A. にその成果を発表した。その続きで、大脳基底核をDREADDシステムで活性化させた時の意思決定について検討した。サブスタンスPプロモーター制御により直接路を、エンケファリンプロモーター制御下により間接路を、それぞれDREADDシステムで活性化させた。正常ラットの大脳基底核直接路を活性化させるとリスク志向的な意思決定を示したが、間接路を活性化させても、意思決定に大きな変化はなかった。
これまでに我々はGABABアゴニストであるbaclofen やニコチンが覚せい剤依存モデルの認知障害や作業記憶障害に対して改善作用を示すことを明らかにしている。今年度は、覚せい剤依存誘発性意思決定障害モデルを用いてGABA受容体およびニコチン受容体リガンドの治療効果を調べ、創薬標的にとしてニコチン受容体の可能性を薬理学的に評価する。ニコチンやアルコール依存に対する治療効果が期待されているニコチン受容体(a4b2およびa6b2)パーシャルアゴニストverenicline (J Pharmacol Exp Ther 2012)の効果を中心に薬理学的実験を行う。また、GABAA受容体アゴニストmuscimolとGABAB受容体アゴニストphaclofenを島皮質に直接注入すると、覚せい剤依存誘発性意思決定障害が改善することを見出したので、薬物依存の治療に有効であると報告されているGABAモジュレーター gabapentinの効果を調べる。
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