研究課題
がんのリンパ節転移は重要な予後決定因子であり、リンパ管はがんの進展に関わる重要なルートの一つである。リンパ節転移に関してはその分子メカニズムの解明や治療標的の特定が遅れている。多くの腫瘍細胞が転移前段階(premetastatic phase)において何らかの分子機構により、特定の器官により転移しやすい傾向があることが広く知られており、この転移を助長する状況(premetastatic niche)を形成することで転移を促進することが血行性転移の過程で報告されている。しかし、リンパ行性転移でのリンパ節におけるpremetastatic nicheの形成の有無、さらに転移メカニズムについてはまだ明らかにされていない。肺がんの所属リンパ節転移モデルを作成し、肺がんリンパ節転移におけるpremetastatic nicheの形成の有無を検討し、niche形成におけるCOXおよびPGの役割を解明した。原発巣の増殖に伴い、所属リンパ節でごく早期からCOX-2が誘導され、COX-2依存性に産生されたPGE2がEP3 刺激することによりケモカインであるstromal cell derived factor (SDF)-1の発現増大がsubcapsular regionで生じSDF-1受容体を高発現する肺がん細胞をトラップすることでpremetastatic nicheを形成すること、さらに、COX-2陽性のSDF-1産生細胞は樹状細胞であり、EP3依存性にTGF-βを産生することでregulatory T cell (Tregs)を動員することによって腫瘍免疫を抑制して、腫瘍転移を増強させる可能性を示すことが出来た。内因性のPGがpremetastatic niche形成の増強を介して、がんのセンチネルリンパ節転移を増強していることが明らかに出来た。COX-2阻害やEP3シグナルを遮断することが、がんのリンパ節転移を抑制する標的になることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
所属リンパ節における転移niche形成のデーターが得られ、新規リンパ行性転移を制御する治療標的として極めて興味深い成果と考えられる。
所属リンパ節における転移niche形成の機序、治療的介入について、検討を開始したい。
抗体、ELISA等の高額試薬の消費量が抑えられた。
今後も染色等の実験は続けていく。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
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