研究課題
私共は低分子量G蛋白質Arf6を中心とし、Arf6活性化因子であるGEP100とArf6シグナル下流因子であるAMAP1からなる癌の浸潤・転移促進シグナル経路を見出しており、その異常高発現が、放射線抵抗性を促進することを見出していた。本研究では、Arf6経路と放射線抵抗性とを結ぶ分子的詳細を明らかにすることを目的とした。以前に、AMAP1はPRKD2と結合することによってβ1 integrin リサイクリングを促進し、癌の運動性や浸潤性を亢進させることを報告したが、まず、β1 integrin ダイナミックス亢進はミトコンドリア anterograde transportを促進すること、Arf6経路活性を阻害するとミトコンドリアは核周辺に集積し、ミトコンドリア酸化的リン酸化過程(i.e., 電子伝達系)から生じる活性酸素によってミトコンドリア同士が酸化的障害を受けることを明らかにした。すなわち、anterograde transportによって互いの距離を保つことは、細胞内部から生じる酸化的障害を軽減し、その結果として放射線照射に対しても耐性が強くなると考えられる。放射線照射による核DNAの損傷や修復過程はArf6経路とは関係せず、Arf6経路異常発現による放射線抵抗性とは関係のないことも明らかにした。続いて、β1 integrin ダイナミックス亢進によって微小管上ミトコンドリアモーター活性が変化し、anterograde transportが促進されることを分子的詳細と共に明らかにした。別途研究費にて、Arf6活性化には細胞内メバロン酸代謝活性が必須であること、変異p53によるメバロン酸代謝活性亢進はArf6経路を異常発現する癌細胞の浸潤転移を促すことを明らかにしている。従って、本研究は、変異p53によって増悪する癌の治療抵抗性分子機構の一端を分子的詳細と共に明らかにしたものであり、当初の目的を達成した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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