研究課題
【Muse細胞の多能性の制御機構の解明】接着培養におけるMuse細胞とコントロールのnon-Muse細胞(間葉系幹細胞からMuse細胞を除いた細胞群)、さらにMuse細胞を浮遊培養し形成させた多能性クラスターの3種類について多能性因子の発現レベルを検証した。接着Museは接着non-Museに比べてOct3/4, Nanog, Sox2の発現が高い傾向を示すが、浮遊培養でクラスターにするとMuse細胞でのこれらの因子はさらに亢進することが確認された。【Muse細胞の発生学的起源の探索】H26年度で探索した遺伝子を元にトランスジェニックマウスを作製し、現在標識された細胞の体内分布等の確認を行っている。【各組織由来のMuse細胞の比較、および組織恒常性維持における役割】膵臓、脳膜、脾臓、気管、肝臓、皮膚、脂肪、臍帯などの結合組織にもSSEA-3陽性のMuse細胞が散在性に局在することが分かった。また骨髄には単核球成分中に~0.03%前後の比率で含まれることが確認された。皮膚、脂肪、骨髄由来のMuse細胞の比較検討では、骨髄Museは胚葉を超えて外胚葉、内胚葉因子を発現するが、脂肪Museは中胚葉系因子が他の2者に比べて高いこと、また皮膚Museは外胚葉因子が高い傾向があることが分かった。さらにナポリ第2大学Umberto Gardelisi教授との共同研究でMuse細胞特異的なsecretome解析を行い、幾つかの特徴的な因子が候補に挙がっている。【ヒトMuse細胞とプラナリア多能性幹細胞との共通機構の探索】1)HsDj2には幾つかのsplice variant がある可能性が示唆された。2)HsDj2のExonをsiRNAによって発現抑制すると、特定のExonを抑制すると神経系細胞に、また別の特定のExonを抑制すると内胚葉系の細胞に分化することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
H26年度はHsDj1が当初想定していたよりも複雑な構成で出来ていることが分り、【ヒトMuse細胞とプラナリア多能性幹細胞との共通機構の探索】のテーマの進展がやや遅れ気味であったが、H27年度はその点も含め各テーマはおおむね順調に進展していると思われる。
【Muse細胞の多能性の制御機構の解明】(H28年度)細胞のマトリックスへの接着関連因子と多能性因子との連動をMuse細胞にて解析する。レーザー顕微鏡を用いてそれぞれの因子の局在を観察する。(H29年度)成果をまとめ考察をする。【Muse細胞の発生学的起源の探索】(H28年度)特にヒト臍帯や胎盤組織における間葉系細胞に着眼して研究を進める。SSEA3陽性細胞の局在を確認し、また可能であればこれらの組織からの単離を試み、多能性や自己複製などの特性解析をする。(H29年度)発生過程から成体までのMuse細胞の局在をトランスジェニックマウスを用いて解析し、ES細胞やエピブラストステムセルなど、既存の多能性幹細胞との比較を行うことで、マウスMuse細胞の特徴付けを行う。【各組織由来のMuse細胞の比較、および組織恒常性維持における役割】(H28年度)組織恒常性維持との関連においては、NogあるいはSCIDマウスで劇症肝炎、糖尿病、脳梗塞、皮膚損傷などのモデルを作成し、骨髄由来のMuse細胞(GFP陽性)が組織再生と再建に寄与するかをレーザー共焦点顕微鏡、多光子レーザー顕微鏡などの組織学的方法を用いて探索する。(H29年度)各種傷害モデルに対して非Muse細胞を投与したときとMuse細胞における組織修復能と比較検討し、これまでの成果を総括する。【ヒトMuse細胞とプラナリア多能性幹細胞との共通機構の探索】引き続きHsDj2と多能性に関して検討を進める。
ナポリ第2大学Umberto Gardelisi教授は幹細胞のsecretome解析の第一人者である。彼らのグループとの共同研究においてMuse細胞と一般的に用いられている間葉系幹細胞(MSC)との間にどのような分泌因子の差があるかを探索する共同研究を行っている。現在Muse細胞に特異的な因子が候補に挙がっており、Muse細胞の特性との関連が示唆されている。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 3件、 招待講演 16件)
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