研究課題
1)転写共役因子YAP1,TAZ阻害作用をもち、がん細胞に抑制的作用をもつ候補化合物を複数獲得し、その作用機序を解明した。これにより、私たちが用いたYAP1、TAZ阻害剤探索系が有効であることが示された。成果の一部は論文発表した。得られた候補化合物の中には、従来知られているYAP1、TAZ制御機構以外に作用点を持つと予測される化合物が含まれるため、分子標的同定などの解析を継続している。2)ミエローマ細胞ではYAP1はDNA損傷に応答してABL1によりリン酸化されp73と共役し腫瘍抑制的に機能することが知られている。そこで、YAP1活性剤をミエローマに投与し、ミエローマに抑制的に機能することを試験管レベルで確認した。現在、動物レベルの実験を進めると同時に、YAP1活性剤が腫瘍抑制的に機能するミエローマ以外の細胞を探している。3)消毒薬として広く使用されているエタクリジンに強いTAZ活性作用があることを見出した。しかも消毒薬として使われる濃度より低濃度でTAZを活性化する。つまり、エタクリジンを消毒薬として使用するときには、TAZがサイド効果として活性化していることになる。この知見は、局所的に短期投与するならば、TAZ活性剤は安全に使用できることを保証する点で重要であり論文発表した。4)TAZ活性剤を筋萎縮治療薬として開発し、特許申請し、現在、誘導体を展開している。誘導体の評価のために、簡便で定量的なアセイ系が必要になった。そこで筋細胞が融合して多核の筋管になると緑色蛍光が生じるユニークなアセイ系を開発し論文発表した。5)脂質修飾蛋白のチャペロンとして機能する分子が、RASSF6と相互作用して腫瘍抑制的に機能することを見出し解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
2014年度の成果をもとに研究を展開できたため、今年度は順調に進展できた。とくに、2014年度には、まだ未熟であった学生の実験手技が向上し、評価可能なデータがとれるようになったことが、進展に大きく寄与している。上記、概要に記載しきれない内容に関連して、論文作成が進行しつつある。
2015年度までの進展をもとに研究を進める。大きな方針の変更は必要ないと考えている。大学院卒業を控えている学生もいるため、論文を完成させる作業を急ぐ。YAP1、TAZの活性剤、抑制剤の研究は、応用的展開のため、製薬企業との共同研究やAMEDの支援が必要な段階にあり、そのための努力を行う。RASSF6については、私たち独自の研究が展開されているので、より多くの力を傾注したい。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (2件)
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