研究課題
Siglecファミリーの分子はシアル酸を認識し、種々の免疫細胞に発現して主に抑制性の機能を持つ。Siglecは同じ細胞に発現するリガンド(シスリガンド)と構成的に会合することが示されているが、シスリガンドの役割に不明な点が多い。我々が開発したCD22(Siglec-2としても知られる)結合シアル酸誘導体を作用させることで抑制性受容体CD22へのシスリガンドの作用を阻害するとBCR架橋によるシグナル伝達が抑制されたことから、シスリガンドがCD22の作用を抑制することでBCRシグナル伝達を増強することが明らかとなった。CD45は多量の糖鎖修飾を受けているために、CD22のシスリガンドの候補であった。実際に、我々はCD22とCD45が細胞表面上で会合していることをPLA法より明らかにしたCD45欠損B細胞ではCD22の抑制性機能に必須のCD22のリン酸化やチロシンフォスファターゼSHP-1との会合が低下しており、CD45がCD22の機能に必須であることが明らかとなった。しかし、シアル酸誘導体存在下では、CD22のリン酸化およびSHP-1との会合は、CD45欠損B細胞でも野生型B細胞と同様に認められたことから、CD22の機能を抑制するシスリガンドはCD45ではないことが明らかとなった。一方、BCR架橋なしにシアル酸誘導体のみでB細胞を処理すると細胞内Ca2+濃度が上昇することから、シスリガンドが静止状態のB細胞でのシグナルレベル(トニックシグナル)を制御することが明らかとなり、さらに、CD45欠損B細胞では化合物によるトニックシグナルの上昇が亢進していたが、CD22の糖鎖リガンドを欠損するST6GalI欠損B細胞ではトニックシグナルの変化が起こらなかったことから、CD45がシスリガンドとしてCD22を制御することでB細胞のトニックシグナルを制御することが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
本研究では当初CD45がBCR架橋時にシスリガンドとしてCD22を制御することを示唆する知見が得られていたが、これは、この知見はCD45がCD22の抑制性機能に必須であるためで、CD45がシスリガンドとして機能しているためではないことが明らかとなった。CD45がCD22の抑制性機能に必要であるという知見は、これまでの報告とは異なり、新知見である。一方、CD45がトニックシグナル制御の際にCD22のシスリガンドとして機能することを明らかにし、当初の想定とは異なる形ではあるが、CD45がCD22のシスリガンドとして働くことを明らかにしたことで、目的を達成することができた。
CD22の糖鎖リガンド欠損B細胞を用いていたが、想定しない機能異常が存在する可能性があるため、CD22の高親和性糖鎖リガンドを欠損するCmah欠損B細胞での解析を行う。
CD22の高親和性糖鎖リガンドを欠損するCmah欠損B細胞での解析を行う。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
F1000Research
巻: 6 ページ: 391
10.12688/f1000research.10583.1
J. Exp. Med.
巻: 213 ページ: 2691-2706
10.1084/jem.20160560