研究課題/領域番号 |
26293064
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
篠原 美都 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10372591)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 幹細胞 / 細胞周期 / 生殖 |
研究実績の概要 |
1) 自己複製因子FGF2/GDNFとp57発現の関連の解析 ①マウス精子幹細胞培養株GS細胞を血清のない培地でラミニンを用いたフィーダーフリー培養し、3日のstarvationの後、精子幹細胞の自己複製因子であるFGF2とGDNF をそれぞれ添加した。quantitative PCR (qPCR)法によりp57の発現レベルへの影響を調べたところ、1日後のRNA にて発現レベルの低下が見られた。②p57発現制御にどのシグナル経路が関与しているかを明らかにするため、これまでに精子幹細胞の自己複製制御との関わりが示唆されてきたシグナル伝達経路(AKT, MAP2K1, JNK, ROS, など)を重点的に、阻害剤を用いて調べた。GS細胞をstarvation2日間の後、各種阻害剤を添加しさらに1日後にサイトカインを添加した。1日後に採取したRNA についてqPCR法にて調べたところ、p57発現の変化が抑制または消失しているものは認められなかった。 2) p57遺伝子の下流ターゲットの同定 ① マイクロアレイ解析によるスクリーニング:p57のconditional-KO マウスからGS細胞を樹立した。アデノウイルスによりin vitroにてcre recombinaseを導入し、2日後に採取したRNAを用いてマイクロアレイ解析を行った。②p57 KO GS細胞への遺伝子導入による自己複製異常の機能的レスキュー:p57 KO GS細胞では増殖の低下が認められた。そこで、マイクロアレイ解析や、ウェスタンブロッティングによってp57の欠損により変化が認められた因子について、p57 KO GS細胞へ遺伝子導入を行い、この細胞の自己複製異常のレスキューを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
1)p57遺伝子の上流遺伝子の同定 ① shRNA libraryによるスクリーニング: 自己複製維持に関与することが知られている分子群(Foxo1, Etv5, Bcl6b, Plzfなど)やGS細胞のマイクロアレイにて精子幹細胞の自己複製に関与が示唆される転写因子群を中心に、shRNA library(購入済み)からそれぞれGS細胞に導入し、p57遺伝子の発現に影響するものをスクリーニングする。shRNAをレンチウイルスにてGS細胞に導入し、3日~5日後に細胞からRNA を回収し、qPCR法にてp57 の発現レベルを測定する。② ①で有意な効果が認められた候補遺伝子群について、試験管内で導入後のGS細胞を維持し、増殖速度を測定すると同時に、移植により幹細胞活性を測定する。③ ②で有意な効果が認められた候補遺伝子について、shRNAによって誘導される増殖活性や幹細胞活性の変化が、p57遺伝子のノックダウンもしくは発現レベルの亢進にてレスキューされるかを判定する。
2)p57 のホーミング活性制御への関与の解析 ①平成26年度の3)にてp57が精子幹細胞のホーミングに関わることを支持する結果が得られた場合、p57 KO-GS細胞またはsiRNAにてp57をノックダウンしたGS細胞について、actin骨格をphalloidin染色にて解析する。②精子幹細胞の遊走に関与が示唆されているGタンパク質Racについてp57との関わりを調べる。Rac dominant negative(RacDN)体をGS細胞に導入し、p57の発現レベルの変化をqPCRにて調べる。③p57発現をsiRNAにて抑制した後、3~7日後に活性型Rac, Rho, Cdc42の発現を免疫染色にて調べる。またpull-down assayによってこれらの分子の活性化の有無を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまで市販の高価な無血清培地を精子幹細胞培養に使用していたが、独自に開発した安価な無血清培地で代用出来るようになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
マイクロアレイの結果、スクリーニングしたい候補遺伝子が当初より多数上がってきたので、より広範囲なスクリーニングを行うために未使用分の経費を平成28年度に使用する。
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