研究実績の概要 |
幹細胞の自己複製型分裂と分化型分裂の選択は細胞周期のG0/G1期に起こり、p21, p27, p57からなるKipファミリーのCDK inhibitor (CDKI)がそれを制御すると考えられている。研究代表者らはこれまでの研究で精子幹細胞においてp21がprogenitorの増殖制御に、p27が幹細胞の自己複製制御に関与することを明らかにした。本研究ではもう一つのCDKIであるp57の精子幹細胞の増殖制御における役割に焦点を当てて解析した。 本研究ではp57 conditional knockout マウスの精巣から樹立した精子幹細胞培養株(GS細胞)を用いて、p57遺伝子の欠損または過剰発現が、精子幹細胞の活性を左右する要因である増殖能や、ホーミング活性・接着性・自己複製維持のどの点に影響を及ぼすかを解析した。同時にp57 conditional knockout マウスをCre-recombinase トランスジェニックマウスと交配して得られた個体にて精子形成への影響を調べ、in vitro とin vivo の両面から解析を行った。精子幹細胞の自己複製因子であるFGF2およびGDNFによりp57遺伝子発現が制御され、p57遺伝子の欠損により試験管内での自己複製活性が低下することが分かった。さらにp57遺伝子欠損により精子幹細胞の幹細胞活性(移植におけるコロニー形成能)は低下していた。また、自己複製制御におけるp57遺伝子シグナル伝達経路を明らかにするため、p57欠損GS細胞を用いてマイクロアレイ解析などにより、発現レベルの変化する遺伝子群を特定した。
|