研究実績の概要 |
本研究では、機能性低分子RNAとしてゲノム情報発現系内在性制御機序を担うmicroRNA (miRNA)による癌個別化医療の実現を目指して、様々な癌病態において特異的にgain-of-functionあるいはloss-of-functionをきたす癌病態特異的miRNAを同定すべく、独自のin vitro/in vivo癌病態モデル系等における統合的スクリーニングを行ってきた。発癌から悪性形質獲得に至る連続的な癌病態の変化や発現異常の時空間的変化に着目したオミックス統合解析、さらに、癌病態特異的miRNAと標的遺伝子の分子機序の詳細な解明から核酸医薬としての可能性の検討までを一貫して実施する本研究の成果は、癌miRNA創薬による癌治療体系の確立等に貢献しうると考えられる。 本研究では、初年度(平成26年度)より癌における上皮-間葉転換(EMT)異常との関連性が報告されている上皮系ならびに間葉系マーカー遺伝子として知られるE-カドヘリン(CDH1)ならびにビメンチン(VIM)等のプロモーター配列をgenomic PCR法により単離、それらの配列における転写活性を確認し、当該年度(平成27年度)にかけて単離したプロモーター領域を蛍光レポーター系ベクターへ組み込んたgPADシステムの作成・検証を行ってきた。CDH1/gPADについては、gPADシステムの創薬における有用性を先行研究である独自のcell-based reporter system (CBRS)によるmicroRNA (miRNA)の機能的スクリーニング系によって明らかにし(Harazono, Y, et al, PLOS ONE, 2013)、in vitro/in vivo癌病態モデル系への応用を進めつつある。VIM/gPADでの機能的スクリーニング系では、新規癌EMT誘導性miRNAであるmiR-544aとその直接的標的分子CDH1とAXIN2を同定し、miR-544aがTGF-β経路ならびにWNT経路を活性化してEMTを促進させる事を報告した(Yanaka Y, et al, Carcinogenesis, 2015)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
各マーカー遺伝子のプロモーター領域の単離、及び単離した各プロモーター配列を組み込んだ蛍光レポーター・コンストラクトの作成をGene Promoter Activity Detection (gPAD)システムを用いて実施する事によって、目的とする細胞で固有の発現量に準じて発現させる独自のcell-based reporter system (CBRS)の構築に成功し、同システムの創薬研究における機能的スクリーニング系での有用性を先行研究(Harazono, Y, et al, PLOS ONE, 2013)に引き続き、相次いで報告する事ができた(Yamamoto S, et al, Mol. Cancer Res, 2014; Fujiwara, N, et al, Cancer Res, 2014; Yanaka Y, et al, Carcinogenesis, 2015)。
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