研究課題/領域番号 |
26293068
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西 英一郎 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30362528)
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研究分担者 |
大野 美紀子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10583198)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 恒常性 / 体温 / 循環動態 / インシュリン分泌 |
研究実績の概要 |
恒常性とは、生物においてその内部環境を「一定の状態」に保つ働きであり、そこからずれた状態が疾患で、そのずれを元に戻すことが疾患の治療といえる。この「一定の状態」、言い換えれば恒常性のセットポイントがいかに設定されているか、その分子機序はよくわかっていない。nardilysin (NRDc)欠損マウスは、低体温、徐脈、低血圧、低インシュリン血症を呈したが、いわゆる正常のネガティブフィードバックが機能せず、あたかも異なるセットポイントで平衡を保ちつつ生命を維持しているように見える。本研究では、ナルディライジン欠損マウスをモデルとし、特に臓器特異的遺伝子欠損マウスを用いることで、体温、循環動態、糖脂質代謝の恒常性が維持される機構、セットポイント設定の分子機構を解明することを目的とする。 当該年度においては、1. 脂肪細胞(Adiponeton-Cre)、2. 交感神経(DBH)、3. 心筋細胞(αMHC)、4. 血管平滑筋(SM22α)、5. 膵β細胞(insulin)、6. 肝細胞(Albumin)特異的欠損マウスの解析を進めた。1. 脂肪細胞(Adiponeton-Cre)においては体温上昇を認め、NRDcが褐色脂肪組織において非ふるえ熱産生を負に制御していることが明らかになった。5. 膵β細胞(insulin)の解析では、NRDcがグルコース応答性インシュリン分泌に必須であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、1)体温、2)循環動態、3)糖代謝の恒常性維持におけるNRDcの役割を明らかにすることである。全身ノックアウトマウスでは、それぞれについて恒常性の破綻あるいはセットポイントの異常を認めたため、どの臓器に発現するNRDcが重要かを明らかにすることを目的とし、各臓器特異的ノックアウトマウスを作製し解析する。当該年度においては、解析に必要な臓器特異的ノックアウトマウス6系統の解析が進んでおり、NRDcの臓器特異的機能、その生理的役割が徐々に明らかになってきている。以上から、本研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
目的1) 体温恒常性維持におけるNRDcの役割の解明:1) 臓器特異的NRDc欠損(NRDc-CKO)マウスを用いた検討:脂肪細胞、交感神経特異的NRDc欠損マウスについて、nullマウスで行った体温測定、寒冷負荷実験、酸素消費量測定、遺伝子発現解析を行う。2) NRDc酵素活性の熱産生遺伝子発現制御における役割:野生型細胞、NRDc欠損細胞、NRDc欠損細胞に野生型NRDc (NRDc-/-*WT)、あるいは酵素活性欠損型NRDc(NRDc-/-*E>A)を再導入した細胞を成熟褐色脂肪細胞に分化させ、比較検討する。 目的2) 循環動態恒常性維持におけるNRDcの役割の解明:1) NRDc-CKOマウスを用いた検討:交感神経(DBH)、心筋細胞(αMHC)、血管平滑筋(SM22α)特異的KOマウスの心拍数、血圧、内因性心拍数、心臓交感神経分布パターン、血清カテコラミン値などの測定および解析、さらに洞機能制御に重要な心筋イオンチャンネルの発現解析を行う。2) 野生型、null、心筋細胞CKOマウスから洞房結節細胞を単離し、活動電位測定およびイオンチャンネル機能を電気生理学的に解析する。 目的3) 糖代謝恒常性維持におけるNRDcの役割の解明:1)分離膵島、β細胞株を用いた検討:Nullマウスにおける神経系、液性因子などの影響を排除するために、NRDc-/-膵島、あるいはβ細胞株のNRDcノックダウンを用いて、膵島、細胞レベルでの糖負荷に対するインシュリン分泌反応を解析する。2)NRDc-CKOマウスを用いた検討:膵β細胞(insulin)、肝細胞(Albumin)特異的欠損マウスの糖代謝を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
基金助成金のため。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度分と併せて使用予定。
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