• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実績報告書

新規アルツハイマー病創薬ターゲットによる神経細胞死メカニズム解明とその阻止

研究課題

研究課題/領域番号 26293075
研究機関公益財団法人先端医療振興財団

研究代表者

星 美奈子  公益財団法人先端医療振興財団, その他部局等, 研究員 (30374010)

研究分担者 廣明 秀一  名古屋大学, その他の研究科, 教授 (10336589)
大西 隆之  公益財団法人先端医療振興財団, その他部局等, 研究員 (30418959)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード構造解析
研究実績の概要

アルツハイマー病の脳では、神経細胞同士の接続を担うシナプスがまず障害され、最終的には細胞体本体が細胞死を起こすことでネットワークに障害が起こり、高次機能が低下する。これまで、アルツハイマー病の原因とされたアミロイドβが本当にこの神経細胞死の原因であるのか、原因であるとしたら神経細胞死のメカニズムはどうなっているのかは全く不明であった。
申請者は、初めて、患者脳から神経細胞死活性を持つアミロイドβの約30量体「アミロスフェロイド」の単離に成功し、昨年度、アミロスフェロイド1個が、成熟神経細胞の機能と生存に必須であるシナプス膜表面のポンプ、Na,K-ATPaseポンプのα3サブユニットに1:1で結合し、その機能を阻害することで神経細胞死を引き起こすことを各種手法で証明した(PNAS2015)。
上記以外に、アミロスフェロイドの立体構造を溶液NMR(PNAS2015)並びに固体NMR(JACS2015)で決定し、さらに、アミロイドの特定のアイソフォームだけで出来る新たな線維の立体構造をNMRで決定し(NSMB2015)、これらを論文として報告するに至った。
また、ファージディスプレイを用いてアミロスフェロイド結合ペプチドを探索し、そのペプチドがアミロスフェロイドに結合し、Na,K-ATPaseポンプに結合することを妨げることで、神経細胞死を阻止出来ることを示した。
上記のとおり予定した研究計画を順調に進めることが出来た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

設定した課題の内、1については、アミロスフェロイド自体のの構造論文の1報目を順調に報告出来た上に、全く予想外のこととして、アミロイドの42残基のものだけで構築が可能なトリプルβシートと名付けた新たな線維の構造を発見し、それについて、Nat Str Mol Biolに報告することが出来た。これは、患者脳から得たアミロイドのシーズを使って、試験管内で構造解析を可能にする技術構築したことに基づいており、今後、アミロイドの代謝についてヒトでのプロファイリングが可能になるかもしれない重要な手法の構築に繋がった。
課題2については、予定どおり順調にペプチドを同定することに成功した。この過程で全く新たなASPD調製方法を発見。これが次の課題である、なぜ脳内でASPDが形成されるのかという課題への手がかりとなることがわかった。さらに得られたペプチドから低分子化への作業を製薬企業を開始することになった。
課題3については、アミロスフェロイド発見の時に見出したタウリン酸化酵素の活性化を確認為、改めて、タウとアミロイドをつなげる結果となった。
上記を総合すると、今年は当初の計画以上に新たな進展があり、次の展開に繋がった。

今後の研究の推進方策

アミロスフェロイド及び線維の構造については、今後、特に患者脳に実際に存在するものとの構造比較を中心に行う予定である。アミロスフェロイドについては、大腸菌により高純度のアミロイドを調製することに成功したため、固体NMRだけではなく溶液NMRによる構造解析を実施する予定である。 その過程で、NMRの結果をPCAという解析手法で容易に評価出来ることがわかり、それを論文として纏めようとしている。
アミロスフェロイドとターゲットの相互作用部位については、ペプチドを用いてさらに絞り込みを行っていく。そのためのアッセイ系を構築する。また、ターゲット自体の分布をin situ などを用いて解析を行っていく。
下流については、ASPDからタウまでのシグナルを全て明らかにすることを目指す。さらに、アミロスフェロイドがどうやって細胞内で作られ、それが細胞外にどうやって運ばれているかについても引き続き研究を行う予定である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 6件) 図書 (1件)

  • [国際共同研究] UCLA/University of Illinois at Chicago(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      UCLA/University of Illinois at Chicago
  • [雑誌論文] Nuclear magnetic resonance evidence for the dimer formation of beta amyloid peptide 1-42 in 1,1,1,3,3,3-hexafluoro-2-propanol2016

    • 著者名/発表者名
      Shigemitsu, Y., Iwaya, N., Goda, N., Matsuzaki, M., Tenno, T., Narita, A., Hoshi, M.
    • 雑誌名

      Analytical Biochemistry

      巻: ** ページ: **

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Aβ(1-42)fibril structure illuminates self-recognition and replication of amyloid in Alzheimers’s disease2015

    • 著者名/発表者名
      Xiao, Y., Ma. B., McElheny, D., Parthasarathy, S., Long, F., Hoshi, M., Nussinov, R., and * Ishii, Y.
    • 雑誌名

      Nature Str. Mol. Biol.

      巻: 22 ページ: 499-497

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Structural Insight into an Alzheimer’s Brain-Derived Spherical Assembly of Amyloidby Solid-state NMR2015

    • 著者名/発表者名
      Parthasarathy, S., Inoue, M., Xiao, Y., Matsumura, Y., Nabeshima, Y., Long, F., Hoshi, M., and *Ishii, Y.
    • 雑誌名

      J. Amer. Chem. Soc.

      巻: 137 ページ: 6480-6483

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Na,K-ATPase 3 is a death target of Alzheimer patient amyloid-assembly2015

    • 著者名/発表者名
      Ohnishi, T., et al.
    • 雑誌名

      Proc. Natl. Acad. Sci. USA.

      巻: 112 ページ: E4465-E4474

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] アルツハイマー病患者脳由来のアミロイドβ凝集体アミロスフェロイドの発見から成熟神経細胞死の分子機構の解明までの道のり2016

    • 著者名/発表者名
      星美奈子
    • 学会等名
      新潟大学脳神経研究会
    • 発表場所
      新潟
    • 年月日
      2016-02-01
    • 招待講演
  • [学会発表] アルツハイマー病で起こる神経細胞死の新たな分子メカニズムの発見と革新的治療法の開発2016

    • 著者名/発表者名
      星美奈子
    • 学会等名
      第4回AAA(Academy of Aging and Cardiovascular-Diabetes Research)
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2016-01-09
    • 招待講演
  • [学会発表] アルツハイマー病患者脳由来のアミロイドβ凝集体アミロスフェロイドの発見から成熟神経細胞の分子機構の解明までの道のり2015

    • 著者名/発表者名
      星美奈子
    • 学会等名
      構造細胞生物学持論/細胞生物学持論
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2015-12-17
    • 招待講演
  • [学会発表] Na+,K+-ATPaseα3 Is a New Death Target of Alzheimer Amyloid-Assembly2015

    • 著者名/発表者名
      Hoshi, M.
    • 学会等名
      Faculty lecture
    • 発表場所
      KU LEUVEN, Belgium
    • 年月日
      2015-11-05
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Na+,K+-ATPaseα3 Is a New Death Target of Alzheimer Amyloid-Assembly,2015

    • 著者名/発表者名
      Hoshi, M.
    • 学会等名
      4th International European Neurodegenerative Diseases & Optogenetics Europe-2015 Meeting
    • 発表場所
      University of Cambridge, UK
    • 年月日
      2015-11-02 – 2015-11-03
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] アルツハイマー病で起こる神経細胞死の新たなターゲット分子の発見2015

    • 著者名/発表者名
      星美奈子
    • 学会等名
      第4回食品薬品生物構造学研究会
    • 発表場所
      静岡
    • 年月日
      2015-10-20
    • 招待講演
  • [図書] Peptide Self-‐Assembly: Methods and Protocols2016

    • 著者名/発表者名
      Yiling Xiao, Dan McElheny, Minako Hoshi, and Yoshitaka Ishii
    • 総ページ数
      **
    • 出版者
      Springer

URL: 

公開日: 2017-01-06   更新日: 2022-01-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi