研究課題
In vitroでヒト好中球に誘導される細胞外トラップ(NETs)形成は、peptigylarginine deiminase 4(PAD4)阻害剤であるCl-amidineにより有意に抑制された。BALB/c、NZW、B6/J、B6/N、DBAの5系統のマウスにpropylthiouracil (PTU)とphorbol myristate acetate (PMA)を投与したところ、どの系統のマウスにも明らかな血管炎は誘導されなかったが、BALB/cとNZWにおいて他系統よりも高値のMPO-ANCA産生が誘導された。そこで、BALB/cマウスにPTUとPMAを投与するモデルにおいて、Cl-amidineまたは対照としてPBSを14日間投与したところ、Cl-amidine投与群において腹膜や肺毛細血管における好中球細胞外トラップ(NETs)の形成が抑制され、血中MPO-ANCA 値も有意に低値であった。以上のことから、マウスにおけるMPO-ANCA産生誘導モデルにおいて、PAD4阻害剤のNETs形成抑制効果とMPO-ANCA産生抑制効果が確認できた。顕微鏡的多発血管炎(MPA)患者の治療前後の末梢血から良好なRNAを抽出できた28症例について、16個の遺伝子の発現変化を解析し、治療反応性を予測した。治療反応性良好と予測した症例が23例、不良と予測した症例が5例であった。今後、各症例の実際のアウトカムに照し、本法による治療反応性の予測精度を検証する。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、MPAの治療予後改善を目的として、基礎研究ならびに臨床研究を包括的に実施している。基礎研究においては、MPO-ANCA産生誘発モデルを開発し、それに対するPAD4阻害剤のNETs形成抑制効果ならびにMPO-ANCA産生抑制効果を確認できた。また、臨床研究においては、MPA患者の治療反応性を予測し、今後の検証に供するデータを取得できた。以上のことから、本研究計画はおおむね順調に進展していると判断できる。
基礎研究においては、MPO-ANCAの産生を伴ってMPA様の半月体形成性糸球体腎炎を自然発症するSCG/Kjマウスを用いて、PAD4阻害剤(Cl-amidine)の発症抑制効果、治療効果を検討する。臨床研究においては、本研究で予測したMPA患者の治療反応性を実際のアウトカムに照らし、本法による治療反応性の予測精度を検証する。
平成26年度に購入を予定していた実験動物の供給元における繁殖状況が整わず、年度内に購入することができなかった。それに伴い遂行する予定であった実験に必要な試薬やプラスチック器具等の消耗品を今年度は購入しなかった。また、今年度に実施した実験についても現存消耗品を活用したことにより、結果として支出が抑えられた。
平成26年度に購入予定であった実験動物を、次年度に購入する。それに伴い遂行する実験に必要な試薬やプラスチック器具等の消耗品を適時購入する。
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