研究課題
全身性エリトマトーデス(SLE) は発症の9割以上が女性に認められ、多くの臓器に障害をもたらす自己免疫疾患である。しかし、いまだ発症のメカニズムが明らかにされておらず、メカニズムを解明してより良い治療法をもたらすことが求められている。SLEのモデルマウスにおいてSLEの発症にToll-like receptor 7 (TLR7)が重要な役割を果していることが報告されている。我々はTLR7に特異的に会合する分子Arl8bを同定した。Arl8bはlysosomeに局在するsmall G proteinで、樹状細胞においてTLR7の機能を調節している。特に形質細胞様樹状細胞においてTLR7刺激による1型インターフェロンの産生が著しく抑制されていた。このArl8bのノックアウトマウスをSLEのモデルマウスMRL-lpr/lprと交配すると、野生型のマウスでは30週までに約半数がSLEを発症して死亡する。しかしノックアウトマウスではSLEを発症せず全く死亡しないことが明らかになった。さらに、他のSLEの発症モデルにおいて検討を行った。BALB/cマウスに、免疫賦活剤として使用されるプリスタンを腹腔に投与すると3-4ヶ月でSLEを発症して約半数が死亡する。しかし、BALB/cのArl8bノックアウトマウスはSLEの兆候は殆どなく、全く死亡しなかった。このことからArl8bがSLEの発症と関わっていることが示唆された。このノックアウトマウスを用いてSLEの発症のメカニズムを解明する。
3: やや遅れている
MRL-lpr/lprに戻し交配したArl8bノックアウトマウスの脾臓肥大、リンパ節腫脹、皮膚炎の解析はある程度十分に行うことができた。血清中の抗核酸抗体値、クレアチン値、BUN値も測定し、ノックアウトマウスでSLEの発症が殆ど認められないことを明らかにできた。しかし、動物センターのケージ数に限界がありSLE発症の検討を目的として長期に飼うマウスを優先したため、若い時期に解析するためのマウスを確保できなかった。そのため、脾臓、リンパ節、骨髄の細胞のFACS Ariaを用いた詳細な解析は殆ど進めることができず、原因となる細胞の特定までは今のところ遠い状況にある。したがって達成度がやや遅れていると評価した。
MRL-lpr/lprを12回戻し交配したArl8bノックアウトマウスは脾臓肥大やリンパ節腫脹が殆ど起こらず、SLEの発症が殆ど認められない。そのため、このマウスを用いてSLEの発症の原因となる細胞と因子、遺伝子を同定する。まずは、10週齢以下のマウスを用いて、脾臓、リンパ節、骨髄の細胞をFACS Ariaを用いて解析し、樹状細胞、マクロファージ、NK細胞、肥満細胞、B細胞、T細胞のどの細胞に違いが認められるのかを明らかにする。そして違いが認められる細胞をMRL-lpr/lpr Arl8bノックアウトマウスに移入して、SLEが発症するのかを明らかにする。さらに、そのSLEの発症に関わる細胞ではどの遺伝子が野生型のものと異なるのかを明らかにする。さらにB細胞特異的にArl8bをノックアウトした場合、脾臓の大きさが小さくなることから、B細胞について詳細に解析する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 1件) 備考 (2件)
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