研究課題/領域番号 |
26293085
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
桜井 敬之 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (80317825)
|
研究分担者 |
新藤 隆行 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (90345215)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | アドレノメデュリン / 受容体修飾因子 / RAMP / 炎症性腸疾患 / 発生工学 / 疾患モデル動物 / CRISPR/Cas9 / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
我々は、多機能ペプチド、アドレノメデュリン(AM)の細胞内シグナルは受容体活性調節タンパクRAMP2(R2)およびRAMP3(R3)で規定され、R2は血管、臓器の恒常性維持、R3は自然免疫細胞の炎症刺激応答に関与することを見出したが、その詳細は不明である。申請研究の目的は、自然免疫(細胞)に関与するR3の機能を、CRISPR/Cas9ゲノムエディティングに基づく新規技術で作製した遺伝子改変マウスを用いて、特に炎症性腸疾患、さらに炎症を背景とする大腸癌病態に注目し解析することで、炎症に関わるR3機能の詳細な解析と腸・循環器系でのR2R3相互機能連関の解明に挑戦することである。H26年度は、次の2項目で進展が得られた。 (A) CRISPR/Cas9ゲノムエディティングによる多遺伝子同時改変マウス作製に用いるマウス系統の樹立を完成させ、同系統の活用で同時多遺伝子改変が可能なことを確認した。成果は現在投稿中である。またこれらに関する技術論文を発表した(BMC Biotechnol. 2014; Xenotransplantation.2014)。現在、この新規樹立マウス系統を用いて、AM-R2R3機能解析用(特に炎症性腸疾患)の遺伝子改変マウスの産出を試みている。 (B)(A)の開発の一方で、自然免疫(細胞)に関与するR3の解析を進めた。R3KOマウス系統における盲腸結紮・穿刺(CLP)実験では、R3KOはその野生型(W)に比べ20%程、術後生存率が低いが、好中球を一過的に欠損させた同マウス系統(KO、W共)のCLP術後では、それらの生存率に差が認められなくなることを見出した。さらに同系統(KO,W)から調整した動員マクロファージ、および同骨髄細胞から準備したマスト細胞(BMMC)を用いてAMやLPSへの反応性を検討したところ、その応答はCLP処理し時系列で解析したR3KOおよびR3Wにおける腹腔細胞群のそれとは異なることを観察した。現在、好中球に重点をおいた解析を続けている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CRISPR/Cas9ゲノムエディティングによる多遺伝子同時改変用マウス系統樹立に当初計画した以上の時間を要した。しかし樹立に成功したので同系統を用いて申請計画の実験に邁進したい。また申請書の計画に記したR2KO/全身過剰発現R3-TgマウスによるR2R3機能の補償有無の最終証明の実験を、同マウス飼育施設の空調工事のため延期した。ただし現在、施設も復旧し繁殖も進んだ。間もなく実験が再開出来る状態である。
|
今後の研究の推進方策 |
延期したR2KO/全身過剰発現R3-TgマウスによるR2R3機能の補償有無の最終証明の実験を遂行する。 間もなく産出される予定のAM-R2R3機能解析用の遺伝子改変マウスで炎症性腸疾患モデルを作製、その病理学的、生理学的な解析を実施する。さらにその知見を改変マウス由来の各初代培養細胞とその各共培養系を用いて分子細胞レベルで検証することで、R3機能の詳細な特定と腸・循環器系でのR2R3相互機能連関の解明に臨む。
|
次年度使用額が生じた理由 |
R2KO/全身過剰発現R3-TgマウスによるR2R3機能の補償有無の最終証明の実験が同マウス飼育施設の空調工事のため次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額とH27年度請求額を併せて、上述した実験に使用する消耗品(試薬、実験器具)に当てる。
|