研究課題
近年、がん治療において免疫チェックポイント阻害治療という新しい概念の免疫療法が登場した。免疫にブレーキをかける細胞表面タンパク質の働きを抑える抗体薬が主で、すでに抗CTLA-4抗体(イピリムマブ)や抗PD-1抗体(ニボルマブ)が一部のがんに対する治療薬として承認を得ており、その効果が注目を集めている。しかしながら、ブレーキを外すと免疫が過剰反応を起こす場合もあり、皮膚や大腸、肝臓などを攻撃して炎症を起こすほか、まれに重篤な副作用として間質性肺炎(3~5%、死亡率1%)を起こすことが報告されている。抗TIM-3はT細胞に発現して免疫反応を抑制する分子として知られており、我々も腫瘍マウスモデルを用いた共同研究を通して、抗TIM-3抗体が抗腫瘍効果を示すことを報告してきた。現在、抗TIM-3抗体は第3の免疫チェックポイント阻害薬として臨床試験に向けて開発が進んでいるが、一方で抗TIM-3抗体は炎症を増強してしまう恐れもあり、臨床試験の前に潜在的な毒性を検証する必要がある。我々は最も重要な副作用として報告されている間質性肺炎に対して抗TIM-3抗体の影響を調べるために、ブレオマイシン誘発性肺炎症線維症モデルマウスに抗TIM-3抗体を投与して病理学的な検討を行った。結果、抗TIM-3抗体を投与されたマウスは、肺内における筋線維芽細胞の増加、コラーゲン沈殿、TGF-bの産生増大を伴うより激しい肺炎症と線維化が観察された。通常、肺胞マクロファージはその細胞表面に発現するTIM-3を介してブレオマイシンに誘発された死細胞を除去して抗炎症・抗繊維化に働いているが、実験結果は、抗TIM-3抗体が死細胞除去を阻害した結果、症状が悪化したことを示した。従って、今後、臨床の場において抗TIM-3抗体が使用される際には、間質性肺炎の副作用に対するリスクを十分考慮した使用方法が求められる。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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