研究課題
我々はこれまでにCD169-Cre x ROSA-YFPマウスの解析により、CD169陽性マクロファージが腸管の粘膜固有層にも局在することをつきとめ、さらにこのマクロファージが、炎症に関与するケモカインCCL8を特異的に産生することにより、腸炎の増悪に寄与していることを明らかにした。CD169陽性マクロファージは、その特異的な局在や機能から判断して、特定の転写因子によってその分化・機能が規定されている可能性が考えられたため、本年度は、CD169マクロファージの機能や局在を決定する転写因子を探索した。その結果、機能制御を司る転写因子の候補として特定の因子を同定した。この転写因子は、定常状態の腸管マクロファージの中で、CD169マクロファージに特異的に発現していることが分かった。この転写因子の欠損マクロファージ(転写因子欠損マウスの胎仔肝臓を用いた骨髄キメラマウスから調製)を用いた解析により、この転写因子が、腸のCD169陽性マクロファージ特異的ケモカインであるCCL8の転写を制御していることが分かった。さらに、転写因子欠損マクロファージにおける網羅的な遺伝子発現解析の結果、この転写因子は、CD169マクロファージにおける炎症促進因子の発現を正に制御するだけでなく、プロモーター上で他の転写因子と拮抗することにより、その標的である抗炎症や組織修復関連遺伝子の転写を抑制していることが分かった。さらに、炎症の後期では、同マクロファージにおける当該転写因子の発現量が急激に低下し、それにより他の転写因子の抑制が解除されて、抗炎症や組織修復遺伝子の発現が亢進することが分かった。これらの知見より、CD169マクロファージは、組織傷害の局面の変化に応じて、転写因子の発現量を制御し、その形質を転換していることが分かった。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
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