研究課題/領域番号 |
26293092
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
嘉糠 洋陸 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (50342770)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 病原体媒介節足動物 / 感染 / コンピテンシー / 病原体 / 中間宿主 / 寄生虫 / ウイルス / 細菌 |
研究実績の概要 |
トレランスによる感染防御反応のメカニズムを解析する目的で、ヒト感染性小形条虫(Hymenolepis nana)と中間宿主・甲虫コクヌストモドキ(Tribolium castaneum)による感染実験モデルを確立した。終宿主(ヒト、マウス)から排出された小形条虫卵は中間宿主であるコクヌストモドキの体内に侵入すると、腸内で孵化し、ただちに腸壁を通過し、体腔において擬嚢尾虫へと成長する。擬嚢尾虫は終宿主への感染性をもつが、驚くことに宿主昆虫の体内から排除されることはない。擬嚢尾虫感染自体は中間宿主に致死を誘導しない。上記のトリボリウムを中間宿主とした小形条虫感染実験系において、逆遺伝学的アプローチにより条虫感染に関与する中間宿主側遺伝子を探索した。主要なシグナル伝達経路を構成する98個の遺伝子について、二本鎖RNAを微量注入し、遺伝子機能が減衰したトリボリウム個体を作出した。小形条虫感染後の擬嚢尾虫数を指標に、スクリーニングを実施したところ、JAK/STAT経路が感染コンピテンシーを低下させていることが明らかとなった。そこで①感染vs非感染、および②感染(野生型個体)vs感染(STAT92Eノックダウン個体)の条件において、トリボリウム中腸から採取したRNA試料を用いてRNAseq解析を実施した。その結果、20個の遺伝子(カテプシンL(3個)、セリンプロテアーゼ(4個)、variable lymphocyte receptor等)がJAK/STAT経路依存性かつ条虫感染時に、その発現を変化させること、さらにその中に含まれる複数の遺伝子が、実際に条虫感染のコンピテンシーを制御していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蚊やマダニなどの病原体媒介節足動物において、その腸管は宿主・病原体相互作用が最初に起こるエリアである。27年度の研究により、病原体媒介節足動物のコンピテンシー(病原体感受性)とレジスタンス・トレランスの分子基盤の連携が一部解明された。特に、JAK/STAT経路とその標的遺伝子群が明らかになった。また、生体防御システムの普遍的理解と、他の病原体媒介節足動物への外挿への基盤構築がなされており、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
腸管バリアをレジスタンス・トレランスの協調作用の場として捉え、モデル生物であるショウジョウバエと、病原体媒介節足動物である蚊、甲虫、マダニ等をパラレルに用いる。その(1)部品(シグナル伝達)(2)挙動(時空間的観察)(3)外挿(他種での保存性)を対象とした研究を引き続き展開する。また、このレジスタンス・トレランスの場をもとに、(4)場のスペクトラム(病原体宿主域等)を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね研究計画通り使用できたが、約4万円分の差額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品等として使用する予定である。
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