研究実績の概要 |
腸管寄生性原生生物である赤痢アメーバのもつ、ヒト組織への侵入・破壊に中心的な役割を果たすシステインプロテアーゼの細胞内輸送・分泌の分子機構を生化学的・細胞生物学的・遺伝学的手法をもって解明することを目的とし、リソソームから細胞膜への輸送に関与する低分子量GTP分解酵素 Rab11Bとその活性の制御、及び下流で分泌を直接実行する分子の特定・解析を行った。活性型 Rab11B 特異的に結合したRab11B エフェクターの候補タンパク質としてβ-adaptin, γ-adaptin, Sec6を同定した。Adaptin はヘテロ四量体の Adaptor protein (AP) を構成して,輸送小胞の形成を促すコートタンパク質のリクルートを担う。赤痢アメーバは 25 種類の adaptin をもつが,うち 2 種類の β-adaptin, γ-adaptin のみが,活性型 Rab11B に不活性型より 10-13 倍高いアフィニティを示した. Sec6 は活性型 Rab11B に不活性型より 5.5 倍高いアフィニティを示した.Sec6 はヘテロ八量体の Exocyst を形成し,これは輸送小胞の細胞膜への繋留を担う.赤痢アメーバは Sec10 を 2 種類もつ一方で Exo84 を持たないことから,その形態・結合様式が他種生物とは異なることが示唆された.更に、局在解析と共免疫沈降法によって,3 つの候補タンパク質が膜画分で Rab11B と部分的に共局在することを示した。以上の結果はRab11B が CP 輸送において出芽から繋留まで制御することを示唆している.本研究成果は、病原因子の分泌と組織侵入・破壊を阻害する方法論の構築にも役立ち、新たなワクチンや創薬の標的を提供する可能性がある。
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