研究課題/領域番号 |
26293095
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三室 仁美 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (80396887)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 細菌 / 感染症 |
研究実績の概要 |
本研究では、ヘリコバクターピロリ (Helicobacter pylori, Hp) の胃粘膜持続炎症メカニズムの包括的理解と、その成果のワクチン開発への応用を目指して、本菌と感染宿主の時間的・空間的相互作用に焦点を絞り、次の研究を企図した。 (A) 胃での応答制御機構の解析:感染経時的なHp因子の発現変動に対応した胃上皮発現動態を解析して、長期感染機構を解明する。 (B) 腸管パイエル板での応答制御機構解析:抗原取り込み器官における菌体と宿主の相互作用と抗原提示メカニズムを解析する。 (C) ワクチン解析:胃およびパイエル板で抗原提示される分子を同定し、予防ワクチン作動メカニズムを解析する。
H27年度は、前年度に行った胃内螺旋状菌および腸内球状菌の、ショットガン解析およびトランスクリプトーム解析結果を精査して、腸内で特異的に発現する因子群の解析優先順位を決定した。腸内球状菌での発現量が多かった因子Xに特に着目し、ピロリ菌マウス感染株での欠損変異株を作製した。当該マウス感染株には着目因子Xのhomologue遺伝子が3つ (X1~X3)存在することが明らかとなったため、それぞれの欠損変異株を作製した。これらの作製した菌株の、生育速度および菌体の形態は野生型と同等であった。さらに、胃上皮細胞への付着および炎症惹起能も野生型と同等であったことから、因子Xは、上皮細胞への付着およびIV型分泌装置活性には影響を及ぼさないことが明らかとなった。マウス腸管結紮ループアッセイに供して、これらX欠損変異株のパイエル板侵入効率を解析した結果、球状菌での発現増大が確認できていたX1欠損変異株では、パイエル板内部取り込み能の低下が見られたことから、因子X1は菌体のパイエル板侵入能を制御する因子である可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、胃内螺旋状菌および腸内球状菌の、ショットガン解析およびトランスクリプトーム解析結果を精査して、特異的因子群の解析優先順位を予定どおり決定することができたため。さらに、菌体のパイエル板侵入能を制御する因子X1を同定できたため。
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今後の研究の推進方策 |
ショットガン解析により同定した腸内での発現が高い因子X1の作用を、よりヒトに近い病態モデル動物であるスナネズミを用いた感染系で確認するために、ピロリ菌スナネズミ感染株での因子X1欠損変異株を作製する。作製した菌株の形態、生育速度、胃上皮細胞に対する付着能および炎症誘導能を精査するとともに、スナネズミ腸管結紮ループアッセイに供して、パイエル板侵入効率における因子X1の作用を確認する。また、X1欠損変異株をマウスおよびスナネズミ感染モデルに供して、感染における因子X1の作用を解析する。さらに、因子X1に結合する宿主因子を、pull-down assayもしくはprotein array解析により同定して、パイエル板での免疫誘導分子機構を解明する。 トランスクリプトーム解析結果からは、菌体生育環境の酸素分圧の違いによって発現の異なる菌体因子について、特にsmall RNAに着目して解析を行い、候補因子同定する。それらの因子の欠損変異株や点変異株を作製し、その作用機序を精査することで、菌体の生存環境による発現制御機構を理解する。 ワクチン解析に関しては、球状菌の防御ワクチンの可能性をスナネズミ感染モデルを用いて精査する。これらの解析を統合して、ピロリ菌の病原性発揮メカニズムを分子レベルで明らかにする。
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