研究課題
本年度の主な成果は以下に示す。1. 蛍光イメージング法によりべん毛繊維の成長速度を定量的に解析した結果、べん毛繊維が長くなると、べん毛蛋白質の輸送速度が減少することが示唆された。2. fliS欠損株の遺伝学的機能解析から、輸送ゲート複合体によるべん毛蛋白質の解きほぐし過程がべん毛蛋白質輸送の律速になることが示唆された。 3. FliH-FliI ATPase複合体のX線結晶構造解析に成功し、FliHはV型ATPaseの外周固定子とそっくりな構造していることが明らかとなった。さらに、結晶構造をベースにした機能解析により、FliHとFliIの相互作用に直接関わる重要な残基を同定した。 4. FlhAのC末細胞質ドメイン(FlhAC)がべん毛蛋白質輸送のエネルギーカップリングに重要であること、さらにその効率的なエネルギーカップリングを行う為にはFliH-FliI複合体の助けが必要なことが示唆された。 5. FlhACのD2とD4ドメインの間の動的な相互作用がべん毛蛋白質輸送に重要であることが明らかとなった。 6. FlhAの膜貫通ドメインとFlhACをつなぐリンカー領域がFlhACの9量体リングの安定化に重要であることが示唆された。7. FlhAの大量発現及び精製方法を確立した。8. FliPが6量体リングを形成することが明らかとなった。さらに、FliOはFliPの6量体リング形成を促進する足場として働くことが示唆された。 9. FliP6FliR2複合体の精製に成功した。10. FliF/FliG/FlhA/FlhB/FliO/FliP/FliQ/FliRの共発現系の構築に成功した。
2: おおむね順調に進展している
FlhAの遺伝学的および生化学的解析から、FlhACの開閉運動がべん毛蛋白質の輸送に重要なこと、FlhACがべん毛蛋白質輸送のエネルギー共役に重要であること、などを明らかにした。輸送ゲート複合体構成蛋白質の大量発現系を構築できた。さらに、FlhA, FliO, FliPの精製にも成功した。しかしながら、FlhAのイオンチャンネル活性測定には至れなかった。
FliF/FliG/FlhA/FlhB/FliO/FliP/FliQ/FliR複合体を単離精製してリポソームに再構成して機能構造解析を実施する。さらに、FlhAのNa+チャネル活性を生化学的に検証する。FliI及びFliHが存在しない条件下でもべん毛を形成できる変異株はNa+イオンを共役イオンに用いてべん毛を形成できる。そこで、輸送装置のエネルギーの入出力関係を明らかにするために、様々なナトリウムイオン濃度下でべん毛の成長速度を計測する。
予定していた海外出張が来年度にかかるものとなった。また、高額な消耗品を今年度は購入する必要がなかったためである。
海外出張費および高額消耗品の購入に充当する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
PLOS Pathog.
巻: 4;12(3) ページ: e1005495
10.1371/journal.ppat.1005495
MicrobiologyOpen
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1002/mbo3.340
Proc. Natl Acad. Sci. USA
巻: 113(13) ページ: 3633-3638
10.1073/pnas.1524025113
Trends Microbiol.
巻: 26 ページ: 267-274
10.1016/j.tim.2014.12.011
PLOS One
巻: 10 ページ: e0134884
10.1371/journal.pone.0134884
日本細菌学雑誌
巻: 70(3) ページ: 351-364
10.3412/jsb.70.351
http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/jpn/general/lab/02/result/