研究課題/領域番号 |
26293099
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山崎 晶 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (40312946)
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研究分担者 |
大村谷 昌樹 熊本大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (60398229)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | C型レクチン / 自然免疫 / 細菌感染 / 糖脂質 |
研究実績の概要 |
樹状細胞は骨髄系細胞の中でもDectin-2を豊富に発現することから、骨髄由来樹状細胞を用いてリポアラビノマンナンの刺激によるサイトカインの産生について検討した。リポアラビノマンナンはトレハロースジミコール酸と同様に、MIP-2、TNF、インターロイキン6などの炎症性サイトカインの産生をその濃度に依存して誘導した。Dectin-2ノックアウトマウスの骨髄に由来する樹状細胞においてはリポアラビノマンナンにより誘導されるサイトカインの産生は消失したが、トレハロースジミコール酸を介するサイトカインの産生は変化しなかった。これらのことから、Dectin-2が樹状細胞におけるリポアラビノマンナンによる炎症性サイトカインの産生に決定的な意味をもつことが示された。 アラビノマンナン-Dectin-2経路の抗炎症作用に焦点をあて、マンノース付加リポアラビノマンナンが炎症性サイトカインに加え、抗炎症性サイトカインであるインターロイキン10の産生をDectin-2に依存して誘導することも見出された。他方、トレハロースジミコール酸あるいはリポ多糖ではインターロイキン10あるいはインターロイキン2の産生は誘導されない。同一受容体サブユニットを介するにも関わらず、異なった細胞応答を誘導する分子機構の1つとして、恒常的に発現する受容体からの早期の強いシグナルが上述のサイトカイン産生能を決定している可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たなC型レクチン受容体MRCLが、結核菌由来の糖脂質を認識することを見出した。HTPLC、HPLCを用いて、そのリガンド分画を精製した。この精製画分は、有害な炎症を惹起することなく、アジュバントとしてT細胞を介する獲得免疫応答を増強することが判明したことから、本経路は理想的なアジュバントのリードとなり得ると考えられる。当該受容体とDectin-2およびMincleは、Fc受容体γ鎖、さらに、その下流のシグナル伝達経路を共有する。しかし、これらの受容体が異なる免疫応答を誘導する分子機構は、いまだに不明である。今後、この特異的な経路の解明を進めることにより、有害な炎症を最小限に抑えて獲得免疫応答の増強を促進する有用なアジュバントの開発につながることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
新規Clecファミリーを発現するNFAT-GFPを導入したレポーター細胞を作成し、これら受容体が結核菌を認識し得るか否かを検討する。活性化モチーフとの共役が不明の受容体に関してはCD3ζ鎖とのキメラ分子を作成して、シグナル伝達能を付与し、レポーター細胞に導入する。これらのレポーター細胞を、結核菌、非定型抗酸菌(M. avium complex)と共培養し、レポーター活性が上昇するか否かを明らかにする。活性が認められた菌種に関しては、様々な溶媒で処理してリガンドが抽出される画分の同定を進める。共培養で認識が認められなかった菌種に関しては、リガンド成分が細胞壁に露出していない可能性もあるため、親水性、疎水性溶媒による抽出画分の活性を確認する。 6F2領域欠失マウスの骨髄由来樹状細胞における結核菌刺激によるサイトカイン産生をin vitroで調べる。その後、野生型マウス、6F2欠失マウス、及びCARD9欠損マウスに M. tuberculosis H37Rv、及びM. bovis BCG株を感染させ、生存率を比較する。14日後、90日後の肺、脾臓中の菌数を測定する。また、14日後、90日後に脾臓、リンパ節よりT細胞を回収し、PPD抗原でin vitro刺激した際のサイトカイン産生(IFNγ、IL-17)を測定する。6F2領域欠失マウスがCARD9欠損マウスと同程度の顕著な易感染性を示せば、結核菌応答におけるCARD9の重要性(Dorhoi, J. Exp. Med. 2010)は、当該レクチン受容体クラスターに存在する何れかの受容体、或いは複数の受容体の組み合わせで説明できることになる。一方、欠失マウスで軽微な障害しか見られない場合は、その他のITAM共役受容体の寄与が予想されるため、FcRγ、DAP12 欠損マウスとの交配を進めて候補受容体の絞り込みを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定より消耗品等が安く購入出来たため。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬購入などの物品費として使用する。
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