本研究では、ウイルス感染センサーであるRIG-I-like receptor(RLR)によるウイルス由来リボ核タンパク質複合体(RNP)認識の分子機構を明らかにすることにより、宿主自然免疫システムによるRNAウイルス感染検知の分子基盤を理解することで、将来的にRLRとそのシグナルを標的とした新たな抗ウイルス薬剤開発につながる知見を見出すことを目指した解析を行った。 平成28年度は、27年度までに確立してきたインフルエンザAウイルス(IAV)のモデルRNPを基質としたin vitro解析を継続して実施した。特にRIG-Iの活性化について、活性化RIG-I分子の構造変化をトリプシン感受性を指標として検出する解析、RIG-IのATPase活性化を指標とした解析、下流の転写因子であるIRF-3の活性化(二量体形成)を指標とした解析という3種の解析を行うことで、異なる観点からの検討を行った。その結果、粗精製段階のモデルRNPを用いた解析ではRIG-Iの活性化が検出されたものの、密度勾配遠心法によりRNPの精製度を上げることによりその活性化が著しく低下することが明らかになった。一方で、密度勾配で分離したRNPを含まないフラクションでもATPaseを活性化能が検出されたことから、ここでの活性はおそらくRNPではなく遊離したRNAが担っていることが予想された。従って、本研究で確立してきた複数のin vitro解析の結果から、RNP単独でのRIG-I活性化は困難であり、何らかの宿主因子が関与する可能性が強く示唆された。本研究で得られた知見と確立した実験系を用いて、RIG-Iの活性化に関与する宿主因子の同定とその機能解析と分子機構の解明へと繋がることが期待される。
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