われわれはこれまでに、ノックアウトマウスを用いた実験で、気道に発現している宿主プロテアーゼTMPRSS2がA型インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)を開裂し、インフルエンザウイルスを感染性にするための必須酵素であることを証明してきた。ただし、マウスはインフルエンザウイルスの本来の感染宿主ではない。そこで、マウスを本来の感染宿主であるマウスパラインフルエンザウイルス1型(センダイウイルス)を用いて実験を行った。センダイウイルスの膜融合タンパク(Fタンパク)は、野生型マウスの気道内では、効率良く開裂し、ウイルスは効率的に増殖し、マウスに対して致死的であった。一方、TMPRSS2ノックアウトマウスの気道内では、センダイウイルスの増殖は、大幅に低下しており、インフルエンザウイルスの場合と同様に、TMPRSS2がセンダイウイルスFタンパク活性化の必須酵素であることが証明できた。
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