研究課題/領域番号 |
26293106
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
改正 恒康 和歌山県立医科大学, 先端医学研究所, 教授 (60224325)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 樹状細胞 / サブセット / クロスプレゼンテーション / ケモカイン / 遺伝子改変マウス / 腸管免疫 |
研究実績の概要 |
研究実績の概要 600-800字 XCR1を発現する樹状細胞サブセット(XCR1+樹状細胞)の機能的意義を明らかにするために、XCR1+樹状細胞を恒常的に欠失するマウス(XCR1-DTAマウス)を作成した。XCR1-DTAマウスにおいて、腸管粘膜固有層および腸管上皮細胞間のT細胞が顕著に減少していた。また、XCR1-DTAマウスにおいて残存していた腸管粘膜固有層T細胞では、腸管特有の膜タンパク発現パターン(CD62L発現の低下、CD103発現の増加)が障害され、死細胞の割合が増加していた。さらに、XCR1-DTAマウスにおいて、デキストラン硫酸ナトリウムの投与により誘導される腸炎症状の増悪が認められた。以上の結果から、XCR1+樹状細胞は、腸管T細胞の生存、分化を支持することにより、腸管免疫の恒常性を維持していることが示唆された。 次に、XCR1自身の機能的意義を明らかにするために、XCR1欠損マウスおよびXCR1のリガンドであるXCL1の欠損マウスを解析したところ、腸管粘膜固有層および腸管粘膜上皮細胞間のT細胞が顕著に減少していた。さらにXCL1の産生源が腸管T細胞であることも示され、XCR1+樹状細胞と腸管T細胞が、XCR1-XCL1による相互作用を介してクロストークしていると考えられた。 本研究成果は、腸管免疫の恒常性を維持する新規の制御機構を提示しており、難治性腸疾患の病態解明、治療手段の獲得に向けて新たなアプローチを提示するものである。また、本研究で樹立したXCR1-DTAマウスは、XCR1+樹状細胞の新たな機能的意義の解明のためのユニークなモデルマウスとして有用である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子改変マウスの作成、解析が順調に進んでいる。得られた遺伝子改変マウスはユニークな実験系であり、すでに国内、国外で多数の共同研究がスタートし、当研究室での知見との相乗効果が期待される状況にある。また、研究室の移転後約1年半が経過したが、順調に研究環境を形成できている。
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今後の研究の推進方策 |
得られた知見の解析を進め、学会発表、論文発表、メディア発表を行う。XCR1+樹状細胞およびXCR1が関与する腸管免疫制御機構の解明に加えて、それらの新たな機能的意義の解明する。また、XCR1+樹状細胞以外の樹状細胞サブセットについても解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度に研究室を大阪大学から和歌山医大へ移転後、マウスが十分繁殖するまで時間がかかった。そのため、ある程度使用額を次年度へ持ち越すことが効率的であると判断した。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度後半から和歌山医大のマウスの繁殖が順調に進んでいる。2016年度には残りの研究費を効率的に使用できる状況にある。
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