研究課題
ナチュラルヘルパー細胞は寄生虫感染やアレルギー疾患において、IL-25やIL-33刺激に応じてIL-5やIL-13などの2型サイトカインを産生するGroup 2 Innate lymphoid cells(ILC2s)に属する細胞である。ILC2sの分化についてはCommon lympoid progenitor(CLP)から分化することが知られており、Innate lymphoic cell progenitor (ILCP)やcommon progenitor to all helper-like ILC (CHILP)などの前駆細胞を経ることや、GATA3やRORaが転写因子として重要であることが明らかになっている。前駆細胞や転写因子についての報告が相次ぐ中、前駆細胞から成熟細胞への分化や、その際の転写因子発現に必須の環境因子についてはIL-7やNotchシグナルが関与すること以外明らかになっていない。IL-7はNK細胞を除くすべてのリンパ球に必須のサイトカインで有り、NotchシグナルはT細胞の分化にも必須であることが分かっている。本研究では、ILC2がどのような環境因子に影響を受けてCLPから分化するかを調べるために、IL-7やNotchシグナルに着目しTSt4-DLL1細胞を用いたin vitroでの研究を行った。その結果、IL-7の濃度やNotchシグナルの強さ、長さといった質的な要素が重要であることが明らかになってきた。この結果は、CLPからILC2sとT細胞やB細胞、NK細胞など、様々なリンパ球への運命決定には分化の場から受け取る環境因子が重要であることを示唆している。
2: おおむね順調に進展している
研究開始当初に行っていた前駆細胞の探索に関する論文が他のグループから報告されたため、前駆細胞の探索から分化条件の探索に目的を変えて研究を行ったところ、ILC2sだけでなく、他のリンパ球であるT細胞、B細胞、NK細胞とILCの分化を分ける環境条件を明らかにすることができた。このことは単にILC2sの研究にとどまらず、すべてのリンパ球に関する研究にとって有意義な結果だと考えている。
本年度はin vitroにおけるILC2sの分化条件を明らかにしたが、来年度は引き続き、ILC2sの分化に最適なIL-7濃度やNotchシグナルを供給できる生体内での場の検索を行う予定である。現在ILC2sの分化は胎児期は肝臓と脂肪組織、生後は骨髄と脂肪組織で起こる可能性が考えられる。免疫組織学的な手法を用いて、NotchリガンドであるDLL1またはDLL4発現を検索する予定である。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (8件) 図書 (4件) 備考 (1件)
Semin Immunopathol.
巻: 37 ページ: 27-37
10.1007/s00281-014-0470-4.
Nat Immunol.
巻: 16 ページ: 276-85
10.1038/ni.3085.
Immunity
巻: 40 ページ: 758-71
10.1016/j.immuni.2014.04.013.
http://www.ims.riken.jp/