研究課題
腸管には粘膜免疫システムと呼ばれる精密かつダイナミックな免疫システムが備えられており、腸管組織における生体防御と恒常性維持を担っている。近年、腸内フローラを介した免疫制御の重要性が注目されており、宿主免疫システムの発達と制御、さらにはその破綻に伴う病態形成との関連が研究されている。我々はこれまでに腸管リンパ組織であるパイエル板の組織内部に共生する細菌としてAlcaligenesを同定し、リンパ組織内共生という新概念を提唱した。本事業ではAlcaligenesによる共生メカニズムと免疫学的作用を検証することを目的に研究を遂行している。本年度は、Alcaligenesの宿主細胞になる樹状細胞に焦点を当てた研究を遂行したい。コントロールとして用いた大腸菌と異なり、Alcaligenesは樹状細胞の内部で長期生存できることが判明した。またAlcaligenesと共培養した樹状細胞からは、IL-10が産生されること、またその産生はAlcaligenesの生存依存的であることが明らかとなった。さらに動物モデルを用いた検討から、樹状細胞から産生されたIL-10は腸管でのバリア機能の維持と炎症抑制に重要であることが示された。これらのことからリンパ組織内共生細菌であるAlcaligenesの免疫学的意義について、樹状細胞を介した免疫制御と炎症抑制という観点からの知見を得ることができた。
1: 当初の計画以上に進展している
リンパ組織内共生細菌という独自の観点から、生体側と菌体側の両観点からの解析を進めており、それぞれの分子メカニズムに関する知見と生体レベルでの重要性を提示することが出来ている。
上記のように平成27年度についても当初の予定通り順調に計画を遂行できたことから、平成28年度の研究においても当初の予定通り研究を進めていく予定である。
H27年度はマウスの繁殖などの都合により、主に培養細胞や細菌、インフォマティクスを用いた解析が主になったため、、
遺伝子改変マウスや無菌・ノトビオートマウスを用い、生体レベルでの解析に用いる。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 謝辞記載あり 8件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 3件、 招待講演 15件) 備考 (1件)
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