研究課題
インフルエンザパンデミックの発生や重症化について、国際比較と歴史的背景からの二次元的検証を行った。方法は、1918年スペインかぜ当時の実際の診療録、インフルエンザH1N1pdm09の文献レビュー、関係国の専門家インタビュー、空間-時間解析等を用いた。スペインかぜによる肺炎の重症化因子は、聴診肺雑音、解熱後の体温の再上昇、入院中最高呼吸数、入院からの持続する6日以上の高熱が因子として抽出された。それぞれは、肺炎、入院後の細菌感染(院内感染)、重症肺炎、ウイルス性肺炎を示唆する。これらの臨床的所見は、現在でもインフルエンザパンデミック対策に生かせる貴重な結果である。インフルエンザH1N1pdm09では、社会・経済レベルの低い国ではより死亡者数が多く、診療総費用が少なかった。2009年のパンデミック発生国のメキシコでは、初期の急激な死亡者の多さは、同国の社会保障制度の質的な格差、医療提供の周知や理解不足等による、受診や治療の開始の遅れが重要因子であった。メキシコ国民を社会保障制度等に基づいた4つの医療カテゴリー(A. 民間健康保険、B. 国民健康保険、C. 無保険者、D. 通常の医療にアクセスしない者)に分け、それぞれに属する専門家(医師等)へのインタビューから、低所得者層の理解不足や生活習慣が、適切な受診行動へと結びつかず、患者の重症化・死亡に影響していたことが分かった。将来、変異ウイルスによるパンデミックが危惧されている鳥インフルエンザでは、ウイルス要因以外にも、環境、貧困な農村地域などが感染者の時間的・空間的集積に寄与していた。インフルエンザパンデミックの発生や重症化に、国や地域の歴史・慣習などの社会的・経済的要因、政策、医療インフラなどの影響が確認された。国や地域の事情や経済・政策などの背景を考慮した国際的な視点でのインフルエンザパンデミック対策が必要である。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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http://kklabo.gr.jp/