研究課題/領域番号 |
26293117
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
位田 隆一 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (40127543)
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研究分担者 |
川村 孝 京都大学, 保健管理センター, 教授 (10252230)
森崎 隆幸 独立行政法人国立循環器病研究センター, 分子生物学部, 部長 (30174410)
青井 貴之 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00546997)
鶴山 竜昭 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00303842)
児玉 聡 京都大学, 文学研究科, 准教授 (80372366)
一家 綱邦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50453981)
鈴木 美香 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (60555259)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生命倫理 / 再生医療 / ガバナンス / バイオバンク / 認定委員会 / 研究不正 |
研究実績の概要 |
①理論研究については、ES細胞及びiPS細胞に関する倫理問題を中心に整理を行うとともにその一端を位田が日本生殖再生医学会講演で発表した。また再生医療や臨床研究で明らかになった研究不正research integrityについても付随的に研究を行った結果を、名古屋大学及び京都大学(児玉と共同)におけるの二つの国際ワークショップで位田、児玉と鈴木がそれぞれ発表し、討論を行った。 ②倫理原則と③具体的規範については、再生医療安全確保法の定める諸規定の検討を行いつつ、位田、森崎、一家が日本生命倫理学会でシンポジウムを組み、成果の一端を発表した。同時に11月に施行規則やガイドラインが新たに策定され、法律が全体として施行されたので、法令の細部にわたる法的倫理的観点と科学的観点からとの双方からの分析に入っている。研究成果は位田が上記法令やガイダンスの作成に参画した際に披瀝した。また、今後改正薬事法との関連で問題になるべき他家細胞移植のための細胞製品の製造に関しても検討し、位田が原料の確保に関する経済産業省の研究会に座長として参加した。 ④ケース・スタディーについては、認定再生医療等委員会の設置と実際の審査開始に焦点を当てて、調査を開始した。特に一家を中心に委員会組織について研究を進めている。⑤現場での課題については、各研究機関・医療機関においてどのような再生医療が実施されようとしているか、アンケート調査等を準備中である。 平成26年2月には本研究を中心に、その他の研究も見据えて、同志社大学内に生命倫理ガバナンス研究センターを開設し、国立循環器病センターと同志社大学の共同シンポジウムの開催に貢献した。また、3月末には外国人学者5名を招いて国際ワークショップを開き、本研究計画及び研究の進展について報告し、議論を行った結果、様々に貴重な示唆や教示を受けた。 各研究者は論文等や講演・口頭発表等の形で成果発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
6つの研究工程のうち5つについて研究を開始した。また、医学・生命科学研究にかかわる研究不正research integrityの問題も研究対象に追加して研究・考察した。 ①理論面では、再生医療安全確保法の制定以前から報告書や指針策定の議論の中で行われてきており、これまでの議論の理論的整理を行ってきた。特に新規の理論的基盤は見いだせないが、主張や学説の整理は予定通り進んだ。研究不正・研究倫理の問題は再生医療のみならずすべての医学・生命科学研究に共通であり、ガバナンスの構築に不可欠と考えて追加し、その成果も一部発表した。 ②倫理原則と③具体的規範については、審議会記録等を用いて法令と規則の分析を行うとともに、研究会での議論で成果を共有している。④ケーススタディーについては、現状では認定再生医療等委員会の設置作業が各医療機関・団体で行われている最中で、関連する委員会の設置に実際に関わる形で研究と実務を両立させている。⑤現場での課題については、本邦1例目のiPS細胞臨床研究における問題点を分析するとともに、組織幹細胞臨床研究における問題点を調査中である。 全体として、若干の凸凹はあるが、追加部分も併せて、おおむね予定通り順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
6つの研究工程は有効と判断して、そのまま平成27年度も維持する。 ①理論的整理は、その成果を内外の雑誌や学会等で発表する予定である。②倫理原則及び③具体的規則は、規定の分析・解釈を進めて早期に解説書の作成に進める。④ケース・スタディーは各医療機関に綿密な調査を行って、3種類の再生医療提供計画の実際の動きを検討する。このための調査は、特に第3種の提供計画について手法を検討する必要があり、本年度から来年度にかけて、慎重に進めたい。⑤現場の問題点についても④と共に各医療機関への調査を行い、状況の把握とともに、制度上の問題点と各機関ごとの課題を整理して調査分析を行う。この部分は本年度と次年度の2期間にまたがる。 ⑥①~6の研究の中から、生命倫理ガバナンスモデルの要素を抽出して、ガバナンスモデルの要素の考案と制度と現実の乖離と問題点を検討して、効果的なモデルの構想に着手する。 研究は、研究会を月例で開催するとともに、生命倫理ガバナンス研究センターの活動を通じて成果の広報に努める。また国際的評価を受けるための国際ワークショップを年度末に開催する。その他、経過は逐次に雑誌や学会、シンポジウム等を通じて発表に努める。アジア生命倫理雑誌(Asian Biothics Review)に特集号を組んで成果を発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、当初予定になかった研究不正research integrityの問題を研究範囲に取り込まざるを得なかったため、当初の研究計画の実施に若干の誤差が生じた。それにより本研究計画に遅れが生じているわけではなく、むしろ範囲を拡張したことにより、より適切な「ガバナンス」の研究を進めることができた。 しかし、そのため、当初予定していた順序を変更せざるを得ない部分や出張調査や外部専門家の招聘等について日程が整わず、旅費や謝金の支出を控えた部分がある。また、必要資料等の購入にも納品の遅れなどが生じた部分がある。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度に使用しなかった分に係る外部専門家の招聘と知識の提供・意見交換に向けて日程調整を行い、実施する。また再生医療の提供に係る認定再生医療等委員会の設置が各地で始まっており、その状況を実地でヒアリング等のために出張する。また文献資料等の物品購入についても、納入が確定している。
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備考 |
2015年2月より生命倫理ガバナンス研究センターを設置し、現在同センターのホームページを構築中。
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