研究課題/領域番号 |
26293118
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
櫻井 文教 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (70370939)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 腫瘍溶解性ウイルス / アデノウイルス / 非コードRNA / プロセシング / Dicer |
研究実績の概要 |
平成27年度は、DicerノックダウンによるAdの増殖促進機構の解明を進めた。全長のVA-RNAをTransfectionした場合には有意なウイルスの増殖促進が観察されたが、VA-RNAの切断体をTransfectionした細胞に野生型Adを作用させたところ、アデノウイルス(Ad)の増殖促進効果は観察されなかった。以上の結果より、VA-RNAが切断させることで増殖促進効果が無くなることが示唆された。一方で、Dicerをノックダウンした細胞に、VA-RNAを発現しない変異型Adを作用させたところ、野生型Adほどではないが、増殖促進が見られた。従って、VA-RNAの切断阻害以外のメカニズムも関与していることが示唆された。Dicerに対するshRNA発現腫瘍溶解性Adを作製し、マウス皮下腫瘍に腫瘍内投与したところ、従来の腫瘍溶解性Adと比較し、腫瘍の増殖を有意に抑制することが示された。一方で正常細胞におけるウイルス増殖は、従来型の腫瘍溶解性Adと同程度であり、正常細胞に対する有意な毒性は観察されなかった。また、Dicerの発現を抑制した培養細胞を用いて高タイターのAdが回収可能か検討したが、劇的な改善は認められなかった。現在、条件を変えて検討している。また培養細胞ならびにマウス肝臓におけるVA-RNAの発現プロファイルを詳細に検討し、明らかにするとともに、ウイルス増殖に関わる新たな機能について検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本腫瘍溶解性Adを感染させた細胞による抗腫瘍免疫の誘導においては、未だ十分な成果が得られておらず、研究の進行に一部遅れが見られる。しかし一方で、DicerによるAdの増殖促進機構に関しては、想定外のメカニズムを示唆するデータも出ている。更には、本研究成果は他の腫瘍溶解性ウイルスに関する研究にも応用可能であることを明らかにするとともに、学会発表14件、論文発表4件と着実に成果もでていることから、全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究協力者として大学院生2名に本研究に参画してもらうことで、より一層に研究の進展を図る。また、連携研究者と積極的に情報交換する。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の研究に関して、予想外の結果が得られ、購入予定だった試薬などの購入を一旦取りやめたため。
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次年度使用額の使用計画 |
得られた結果を基に今後の研究計画をよく考えたうえで試薬を購入する。
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