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2015 年度 実績報告書

膵星細胞の立体培養法確立応用による膵がん難治性の要因解明

研究課題

研究課題/領域番号 26293119
研究機関岡山大学

研究代表者

狩野 光伸  岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (80447383)

研究分担者 正宗 淳  東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90312579)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワードナノ薬理学 / 腫瘍
研究実績の概要

共同研究者により樹立された初代培養のヒト膵癌間質由来の膵星細胞(pancreatic stellate cell; PSC)により立体培養や血管内皮細胞との立体共培養の構築に成功を収めた。PSCの立体培養系で高分子物質の分布解析を通じ、細胞の分泌する線維量と立体透過性が相関することが示唆された。膵腫瘍細胞とPSCを混ぜ動物に皮下移植した実験系を作成した。この動物実験系でデキストラン分布が血管外に移行後やはり腫瘍細胞に至らずPSCの分布に阻まれることが示唆された。関連して、BxPC3腫瘍細胞とFGF-2を混合して動物移植すると、FGF-2を混合しない場合に比較し間質コラーゲン量が増加し、薬剤の送達及びアルブミンパクリタキセルによる治療効果が減弱した(J Control Release, 230:109-115)。in vitro立体培養について共同研究者により樹立された不死化PSCを用いても成功した。ただし血管内皮細胞の共培養は現時点で不死化PSCでは未達である。並行して立体細胞培養の方法を一般に簡便化し特許出願した。共同研究者により採取されたヒト膵がん組織の電子顕微鏡(電顕)観察をまず一症例行った。立体培養PSCの電顕観察にも着手した。結果、従来法よりも特許出願した新規の簡便培養法でヒト症例と同様の構造が再現されてきていたが、細胞外基質は形態学的には従来法新規法ともほとんど存在しないことが判明したが、光学顕微鏡免染上は存在が観察された。他方で、BxPC3細胞の動物移植系において、これまで静的な特性と考えられてきた、腫瘍血管高分子物質漏出性の時空間的動的変化が見られ、これを共同報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は次に詳しく述べる通りであるが、これに照らして、順調に進展している。本研究の目的とはすなわち、膵がんの治療効果はここ30年来ほとんど改善しておらず、とくに手術適応のない進行性膵がんでは抗腫瘍剤が主な治療法だが、平均予後が6か月未満と特に短く、投与薬剤が十分有効には奏功していないと考えられることのメカニズムを、新規実験系の構築を通じて解析することである。最近ナノ薬剤であるアルブミンパクリタキセル(アブラキサン)が予後延長を示し臨床認可されたが、どのような患者では奏功しにくいのかまだ十分には明らかではない。この現状を踏まえ、本研究では、抗腫瘍薬剤の奏功程度を左右する原因を薬剤送達経路としての腫瘍細胞以外の腫瘍組織構築因子すなわち腫瘍間質に求め、PSCを用いた新規三次元培養系の構築を通じて、仮説の実証を進めることを、本研究の目的としている。これにたいして、おおむね順調な進展があった。

今後の研究の推進方策

これまでTGF-β阻害が膵がんにおけるナノ薬剤送達の改善効果を持つ可能性を動物モデルにおいて示してきたが、これをPSC立体培養の系で確認し、さらに細胞外基質分泌を含めて説明因子の探索を行う。一つの不死化PSC株で成功したのち、複数の株でも同様の挙動が観察できるかを確認する。並行して、不死化PSCおよび血管内皮細胞を用いて血管様構築が可能であるかを検討する。これらのためにも引き続き、ヒト膵がん間質およびPSC立体培養組織の電顕観察を行う。

次年度使用額が生じた理由

本年度研究進捗内容が、予定していた予算額よりも少ない額で実現できたため。

次年度使用額の使用計画

主として物品費(実験消耗品費)として用いる予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Increased fibrosis and impaired intratumoral accumulation of macromolecules in a murine model of pancreatic cancer co-administered with FGF-2.2016

    • 著者名/発表者名
      Sakai, S., Iwata, C., Tanaka, H.Y., Cabral, H., Morishita, Y., Miyazono, K., Kano, M.R.
    • 雑誌名

      J. Control. Release

      巻: 230 ページ: 109-115

    • DOI

      doi:10.1016/j.jconrel.2016.04.007

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Vascular bursts enhance permeability of tumour blood vessels and improve nanoparticle delivery.2016

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto, Y., Nichols, J.W., Toh, K., Nomoto, T., Cabral, H., Miura, Y., Christie, R.J., Yamada, N., Ogura, T., Kano, M.R., Matsumura, Y., Nishiyama, N., Yamasoba, T., Bae, Y.H., Kataoka, K.
    • 雑誌名

      Nat. Nanotechnol.

      巻: 掲載確定 ページ: 掲載確定

    • DOI

      doi:10.1038/nnano.2015.342

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] インフラストラクチャーの重要性2016

    • 著者名/発表者名
      狩野光伸
    • 学会等名
      第二回血管生物若手研究会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      2016-03-04
    • 招待講演
  • [学会発表] Unexpectedness and long-term goals.2015

    • 著者名/発表者名
      Kano, MR
    • 学会等名
      China-Japan S&T collaboration toward future smart society, China-Japan Interdisciplinary Science and Technology Innovation Salon 2015
    • 発表場所
      北京
    • 年月日
      2015-11-25 – 2015-11-26
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] ナノDDSと難治がんの微小環境:ナノ病態生理学2015

    • 著者名/発表者名
      狩野光伸
    • 学会等名
      第37回生体膜と薬物の相互作用シンポジウム
    • 発表場所
      熊本
    • 年月日
      2015-11-20
    • 招待講演
  • [学会発表] ナノメディシン活用の方途を広げる:ナノ病態生理学の可能性2015

    • 著者名/発表者名
      狩野光伸
    • 学会等名
      第1回徳島ナノメディシン・シンポジウム
    • 発表場所
      徳島
    • 年月日
      2015-07-29
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] ナノ病態生理学:ナノ視点から見た腫瘍血管と間質2015

    • 著者名/発表者名
      狩野光伸
    • 学会等名
      第104回日本病理学会総会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2015-04-29
    • 招待講演
  • [産業財産権] 特許出願2016

    • 発明者名
      岡山大学狩野光伸
    • 権利者名
      岡山大学狩野光伸
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2016-067729
    • 出願年月日
      2016-03-30

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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