研究課題/領域番号 |
26293121
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
家入 一郎 九州大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (60253473)
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研究分担者 |
廣田 豪 九州大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (80423573)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | CYP3A4 / コヒーシンモデル / 個人差解明 / 薬剤反応性 |
研究実績の概要 |
CYP3A4遺伝子発現に寄与する領域と転写因子、コヒーシンモデル(CM)を構成するタンパク質の検出、以上の検討を行うことによって、我々が想定するCMを検証した。すなわち、5 Mbp離れたdeferential methylation region (DMR領域)と5'-上流域(5'-UTR)がそれぞれエンハンサーとプロモーターとして機能することの証明を最重要課題とした。DMRの塩基配列から9種類の転写因子が抽出された。siRNAを用いたknockdown assayによりCYP3A4 mRNA発現への影響を評価した結果、GRαの重要性が示唆された。また、ヒト肝組織におけるGRαとmRNA発現量の相関解析では、両者に正相関を認めた。さらに、ChIP assayにより結合状態について検討した結果、DMR領域の脱メチル化により、DMR領域へのGRα結合量が2倍以上増加した。GRαのCYP3A4への直接関与は知られていないが、GRα遺伝子変異がCYP3A4活性に影響することが報告されており、これらの現象をサポートする。 3C assayでは、CYP3A4 mRNA発現量が高いヒト肝検体ほどDMRと5'-UTRの遺伝子間距離がより近接しいてることが明らかとなっている。CMを構成する場合、両領域を接近させるタンパク質の介在がある。そこで、ChIP assayにより、コヒーシンタンパク質の結合を検討した。その結果、MDR領域を脱メチルすることで、コヒーシンサブユニットの1つであるRad21タンパク質の結合量の有意な増加が観察された。 DMRとCYP3A4 5'-UTRがCMを構成し、立体的に近接し、GRαを介して、それそれがエンハンサーとプロモーターとして機能することが強く示唆された。このことは、MDR領域のシトシンのメチル化がCYP3A4遺伝子発現に重要であることを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、我々が想定するコヒーシンモデルの検証を最重要課題とした。GRαが転写因子として寄与すること、コヒーシンサブユニットの1つであるRad21タンパク質の検出がみとめられたことから、ほぼ計画通りに研究が進んでいると判断される。以上の結果は、MDR領域のシトシンのメチル化がCYP3A4遺伝子発現に重要なバイオマーカーであることを強く示唆する。これらの結果は、次年度に実施する臨床研究の科学的基盤となる。
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今後の研究の推進方策 |
DMR領域のメチル化頻度の定量方法の確立:DNAのメチル化状態は、起源となる組織により異なる。メチル化診断を臨床に応用する場合、肝由来DNAが必須となる。しかし、直接、得ることは困難であるので、末梢血を活用する。末梢血中には、肝由来細胞が微量リークする。それらの細胞を抗原・抗体反応でpull downし、DNAを抽出し、試料とする。メチル化頻度として、標的CpGIのメチル化をbisulfite後、pyrosequenceにて算出する方法を確立する。 健常成人を対象とした臨床試験の実施:DMRのメチル化状態をバイオマーカーとし、健常成人を対象に、CYP3A4基質薬物を投与することで、バイオマーカーとしての有用性を評価する。基質薬物としては、ミダゾラムとする。
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