本年度は前年度の結果に基づいて検討を加えた。前年度の臨床試験の結果、ミダゾラムの体内動態のバイオマーカーとして血液中から分離した肝細胞中のDNAメチル化を指標として解析をおこなったが、肝細胞以外の混入のため正確な測定を行うことができなかった。このため、本年度は血液からの肝細胞の分離の特異度を高める検討を行った。プロトコルを改定するにあたって、各分離ステップにおける肝細胞の分離効率・分離量を定量的に評価するため血液に肝がん由来細胞であるHepG2細胞のスパイクを行い検討を加えた。その結果、これまでに肝細胞の粗分離に用いていたフィルターのポアサイズの最適化を行うことができた。その後の分離においては従来からの肝細胞特異的な膜タンパク質であるアシアロ糖蛋白受容体によるセレクションに加え、血液中の細胞の大部分を占めるT細胞、B細胞の除去を行うこととした。これにより、従来からの方法と比較して圧倒的な肝細胞以外のコンタミネーションを低下を実現することができた。 また、本研究のもう一つの目的であるコヒーシンモデルの立証を試みた。これまでに明らかにしたGRαの結合に伴い、DMR並びにCYP3A4転写開始点近傍におけるヒストンアセチル化の上昇を確認することができた。GRαの結合領域が存在しないCYP3A4遺伝子近傍においてGRαによるヒストンアセチル化の亢進を認めたことと、以前の結果であるDMRとCYP3A4転写開始点近が近傍していることを合わせて考えるとCYP3A4遺伝子においてコヒーシンモデルが成立しており、この立体的な構造変化が肝臓におけるCYP3A4発現の個人差の主要な要因となっていると思われる。
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