研究課題/領域番号 |
26293125
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
村上 正巳 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30241871)
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研究分担者 |
角野 博之 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (10375579)
常川 勝彦 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30436307)
奈良 誠人 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (80420165)
荒木 修 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (80589482)
木村 孝穂 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90396656)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 甲状腺ホルモン / 遺伝子 / 一塩基多型 / 自己抗体 / 動脈硬化 |
研究実績の概要 |
甲状腺ホルモン代謝酵素には1型、2型、3型の甲状腺ホルモン脱ヨード酵素が存在する。このうち、T4を活性型のT3に変換する2型(D2)と活性型のT3をT2に変換する3型(D3)が甲状腺ホルモンの活性化と不活性化に係る生理的に重要な酵素である。本研究において、血管や膵β細胞に発現しているD2と膵β細胞に発現するD3の糖尿病や動脈硬化の病態における病態生理学的意義について臨床検体、培養細胞および遺伝子改変動物を用いて検討している。 本年度は、ヒト臍帯静脈内皮細胞にD2が発現していることを見出し、D2により局所でT4から変換された活性型のT3が、甲状腺ホルモンの典型的な遺伝子発現調節を介さないnongenomic actionにより内皮細胞の遊走を促進することを明らかにして論文発表を行った。この成果は、甲状腺ホルモンが血管内皮細胞に直接作用して抗動脈硬化作用を発揮する可能性を示しただけでなく、甲状腺ホルモンのnongenomic actionにD2による甲状腺ホルモンの活性化が関与する可能性を初めて明らかにしたものである。また、D2のThr92Alaの一塩基多型が中高年者における運動療法による耐糖能改善効果に関与することを明らかにした。さらに、膵β細胞に発現するD3のインスリン分泌における生理的役割について検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト臍帯静脈内皮細胞にD2が発現していることを見出し、D2により局所でT4から変換された活性型のT3によって直接の遺伝子発現調節を介さずに細胞遊走を刺激することを明らかにして、Endocrinology誌に発表した。この成果は、甲状腺ホルモンの全く新たな抗動脈硬化作用を明らかにしただけでなく、甲状腺ホルモンによる直接の遺伝子発現調節を介さない作用(nongenomic action)におけるD2の役割を明らかにした画期的な成果であり、新聞報道も行われた。また、D2のThr92Alaの一塩基多型が中高年者における運動療法による耐糖能改善効果に関与することを明らかにし、国際誌に論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
血管内皮細胞に発現するD2とこれによる甲状腺ホルモン活性化の抗動脈硬化作用のメカニズムについて、我々が所有するD2のノックアウトマウスを用いて個体レベルで解明する。さらに、D2の一塩基多型と動脈硬化の関連ついて多数の症例や健診受診者において検討する。
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