研究課題
甲状腺からは主にT4が分泌され、生理作用を発揮するためにはT3に変換される必要があり、また不活化のためにはT4がrT3、T3がT2に変換される必要がある。このような甲状腺ホルモンの代謝を行う酵素がヨードサイロニン脱ヨード酵素である。ヨードサイロニン脱ヨード酵素には1型、2型、3型が存在する。このうちT4を活性型のT3に変換する2型(D2)とT4を不活性型のrT3に、活性型のT3をT2に変換する3型(D3)が甲状腺ホルモンの活性化と不活性化に関わる生理的に重要な酵素である。我々は、褐色脂肪組織、骨格筋、膵β細胞に発現しているD2と膵β細胞に発現しているD3の糖尿病の病態における役割を検討してきた。我々は培養マウス膵β細胞であるMIN-6細胞にD3の発現を確認し、インクレチンであるGLP-1を添加したところ、MIN-6細胞からのインスリン分泌の増加とともに、D3の発現が増加することが示され、この刺激には細胞内のcAMPが関与することが明らかとなった。さらに、T3はGLP-1によるインスリン分泌を抑制したことから、膵β細胞に発現するD3はGLP-1によるインスリン分泌を増強する役割がある可能性が示唆された。今回、MIN-6におけるD3発現はグルカゴンおよびステロイドホルモンにより制御され、糖尿病治療薬であるビグアナイドの影響を受けるという全く新たな知見が得られ、その作用機序について検討を行っている。我々はさらに、D2のThr92Alaの1塩基多型(SNP)が糖尿病の病態に関わっている可能性を検討したきたが、今回中高年者の最大酸素摂取量および運動療法における耐糖能改善効果とD2のSNPに関連がある可能性を示唆する成績が得られた。これらの研究成果は、甲状腺ホルモンならびにその代謝酵素であるヨードサイロニン脱ヨード酵素の糖尿病の病態における役割を示唆するものと考えられる。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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