研究課題/領域番号 |
26293126
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
古市 賢吾 金沢大学, 大学病院, 准教授 (50432125)
|
研究分担者 |
和田 隆志 金沢大学, 医学系, 教授 (40334784)
岩田 恭宜 金沢大学, 大学病院, 助教 (90432137)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 急性腎障害 / 腎コロボーマ症候群 / PAX2 / 線維化 / 炎症 |
研究実績の概要 |
腎コロボーマ症候群は稀少な遺伝性疾患である。PAX2は腎発生に関与する重要な因子であると共に、急性腎障害後も再活性化し、障害進展・修復に重要な因子の可能性がある。本研究は、稀少な遺伝性疾患である腎コロボーマ症候群の遺伝子診断法の確立と、急性腎障害のバイオマーカー開発を、PAX2遺伝子という共通の視点で解析を進める点で特徴を有する研究である。 腎コロボーマ症候群に関しては、これまで、PAX2を含めた26の候補遺伝子の解析を行い、次世代シークエンサーとサンガー法の組み合わせにより、11例にPAX2およびその他4つの遺伝子にそれぞれ1カ所の変異を確認しPlosOneに報告した。そのうちKIF26Bては、世界ではじめてヒトの変異を示した報告であり、その意義は大きい。新規症例もさらに集積してきており、現在それらの遺伝子解析も順次進めているところである。 急性腎障害に対する基礎研究に関しては、PAX2siRNAを用いた検討とPAX2ヘテロノックアウトマウスによる検討を進めた。マウス腎虚血再還流障害にてPAX2遺伝子の再活性化とその発現抑制により線維化の低減が確認された。網羅的解析から得られた結果や,データベースでの検討結果と合わせて,線維化に関する機序と標的分子の特定を進めている。さらに、尿細管上皮細胞のみで発現調節可能なPAX2コンディショナルノックアウトマウスの準備を進めた。CreマウスとPAX2-floxマウスとのかけ合わせを行い、ノックダウンの誘導に関しての検討を開始している。 急性腎障害の臨床研究に関しては、各種病態の急性腎障害に対するサンプル収集,臨床情報収集を進めた。代表例の経時的なサンプルにおける網羅解析から、急性腎障害発症時にみられ経過で消失していくピーク、急性腎障害後の経過で新たに出現してくるピークが確認された。現在所見の再現性と蛋白同定を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、○A腎コロボーマ症候の解析、○B急性腎障害に対する基礎研究、および○C急性腎障害の臨床研究 から成る。 ○A腎コロボーマ症候の解析に関しては、当初の予定通り進捗し26症例の遺伝子変異の検索を終了した。新規の症例収集もすすみ、予定通りの進捗状況である。 ○B急性腎障害に対する基礎研に関しても、介入実験、ヘテロノックアウトマウスでの線維化の差を認めており、その機序についても順調に解析を進めている。コンディショナルノックアウトマウスの準備も進んでおり、予定通りの進捗状況である。 ○C急性腎障害の臨床研究に関しても、前向きの症例および検体の収集が進んでいる。また、網羅解析から、急性腎障害発症時の経過でみられる候補分子が示され、順調に進展している。今後も、引きつづき症例および検体収集を進める。また、生検標本での検討に関しても、倫理委員会の承認を得ており、染色条件の検討を開始している。 以上、3つのプロジェクトとも予定通りの進捗状況である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は最終年度である。○A腎コロボーマ症候の解析,○B急性腎障害に対する基礎研究,および○C急性腎障害の臨床研究 の3つのプロジェクトの検討をさらに発展させる。さらに,得られた結果を相互に比較検討させる事により、解析結果の補強と全体を俯瞰的に見た際のそれぞれの結果の意義についても整理し、基礎および臨床の両視点からまとめを行う。 ○A腎コロボーマ症候の解析に関しては、原因不明の腎不全症例に対して、今回開発した遺伝子診断法を用いて、原因不明の腎不全症例における遺伝子診断の検討を行う。新規症例もさらに集積してきており、それらの遺伝子解析も順次進める。新規腎コロボーマ症候の症例収集も引きつづき行う。 ○B急性腎障害に対する基礎研究に関しては、siRNAによる制御による検討およびヘテロノックアウトマウスの結果から得られている、線維化進展に関する機序と標的分子の特定を網羅的解析から得られた結果や,データベースでの検討結果と合わせて進める。さらに、コンディショナルノックアウトマウスを完成させ、先行実験と同様の検討を行い、腎での特異性およびPAX2制御の時間的特異性に関しての検討を進める。 また、○C急性腎障害の臨床研究に関しては、網羅解析から、急性腎障害発症時の経過でみられる候補分子が示された。検討を重ね、再現性と蛋白同定を進める。また、前向きの症例および検体の収集を進めると共に、上記分子および基礎研究Bにて可能性が示される候補分子の選定を進める。測定可能な分子があれば、収集した臨床サンプルでの測定を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
無駄のない研究計画とその実行により、若干の未使用分が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度以降の実験の遂行に有効に利用する予定である。
|