研究課題
本研究は,稀少な遺伝性疾患である腎コロボーマ症候群の遺伝子診断法の確立と,急性腎障害のバイオマーカー開発を,PAX2遺伝子という共通の視点で解析を進める点で特徴を有する研究である.1. 腎コロボーマ症候の解析,2. 急性腎障害に対する基礎研究,および3. 急性腎障害の臨床研究 の検討を進めた.1. 腎コロボーマ症候の解析に関しては,PAX2遺伝子変異部位とその表現型について,詳細な検討を進め、論文化した.また,DNA結合モチーフ解析によるin silicoでの解析により,腎発生および修復にかかわる分子の候補22因子を見出す事ができた.また,PAX2以外の遺伝子として世界で初めてヒトでの報告となったKIF26Bに関してもin silicoの解析および,細胞・動物実験の基礎的検討を開始する事ができた.2. 急性腎障害に対する基礎研究に関しては,siRNAによる制御による検討,およびヘテロノックアウトマウスやコンディショナルノックアウトマウスによる検討から多くの知見が得られた.Pax2制御により,線維化促進効果が得られた.PAX2遺伝子変異症例が腎不全に至る機序を説明する知見と考える.また,in silicoの解析で候補となった22の分子の内,細胞周期に関連する一因子が病態に関与している可能性が示された.さらに,3. 急性腎障害の臨床研究に関しては,代表例の経時的なサンプルにおける網羅解析から,特徴的な経過を示すピークが確認された.ピークのうち1つは、尿細管障害マーカーとして広く知られている分子であったが,障害時には,特徴的な分子断片として検出されることが確認された.PAX2を主体とした一連の検討において,関連分子を含めた多くの新知見が得られた.一部は、腎発生異常や組織障害の病態形成に関する主体を担っている事を示しており,腎障害進展機序の一端を解明出来たものと考える.
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nephrol Dial Transplant.
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1093/ndt/gfw417
Kidney Int.
Clin Exp Nephrol
巻: 20 ページ: 195-203
10.1007/s10157-015-1144-9