研究課題/領域番号 |
26293127
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
和田 隆志 金沢大学, 医学系, 教授 (40334784)
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研究分担者 |
古市 賢吾 金沢大学, 大学病院, 准教授 (50432125)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 糖尿病性腎症 / 炎症 / エリスロポエチン / エリスロポエチン受容体 / 自己抗体 / バイオマーカー / 心血管病変 / バイオインフォマティクス |
研究実績の概要 |
増加の一途をたどる糖尿病により、腎症はじめ全身の臓器合併症が生じる。この臓器合併症のひとつである糖尿病性腎症は新規透析導入原疾患の第1位であり、その克服が期待されている。本研究は、腎症など臓器合併症、生命予後に重要な貧血に関連し、かつ腎臓から産生されるエリスロポエチン(EPO)に注目した。これまで我々は新規のエリスロポエチン受容体(EPOR)阻害作用を有する抗EPOR抗体を同定した。最近になり、本抗体と全身性エリテマトーデスの臓器病変との関連を報告した(J Rheumatol2016)。本研究では、EPO-EPORを介する臓器合併症の機序解明を目指し、糖尿病臓器合併症の共通進展機序である炎症、線維化に着目した。ヒト培養血管内皮細胞を用いてEPO投与有無による網羅解析とそこから得られた特異的な共通応答分子とその障害機構を検討した。新たなパスウェイとしてthioredoxin interacting proteinなどインフラマゾーム活性化につながる経路を同定した。一方、EPO投与によりTRAF4などの生体環境のホメオスターシス維持に関与する遺伝子の発現亢進、炎症シグナルの低下を確認している。最終的に炎症性サイトカイン発現の低下を確認した。また、糖尿病性腎症では、慢性炎症から腎線維化へと進展し、慢性腎不全へと至る。これまで腎などの臓器線維化に関与することを報告してきた骨髄由来細胞fibrocyte(PNAS2006)を用いて、EPOの役割を検討した。その結果、炎症に続く、線維化の過程においても、EPOシグナルが病態へ関与することを明らかにした。これらの結果より、EPOはその受容体を介して、炎症,線維化カスケードの制御を行い病態に影響を与えている可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度も引き続き、糖尿病臓器合併症の発症,進展の共通基盤である高糖に着目した。さらに、共通の障害部位である血管内皮細胞ならびに骨髄由来fibrocyteを場として、共通の進展機構である炎症に着目して研究を進めた。バイオインフォマティクスの技術を用いて、血管内皮細胞に特異的な糖応答機構、ことにエリスロポエチン受容体(EPOR)の下流シグナルとその転写因子の探索を行い、新たなパスウェイを見いだすことができた。現在fibrocyteについても検討を行っている。さらに、高糖刺激に関連した炎症の調整シグナル候補を同定している。これまで、本研究の体制基盤を確立し、EPOならびにその受容体を介した糖尿病性臓器合併症の発症,進展にはたす新規細胞,臓器保護分子ならびにそのメカニズムの解析が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度も引き続き、血管内皮細胞ならびにfibrocyteを中心に高糖刺激に伴う既知ならびに未知の細胞保護に関連する遺伝子とそのシグナル伝達,核内転写因子のパスウェイの同定とその遺伝子群の検証を行う。さらに、現在新たに同定した高糖により誘導される炎症関連の新たなパスウェイを同定し、関連する遺伝子の改変したマウスを作成した。このマウスを用いて実験糖尿病モデルを作成し機能解析が進んでいる。さらに、in vitroならびにin vivo研究で得られたEPOR関連の特異的遺伝子(因子)情報を用いて、ヒトサンプルでの検証を開始している。引き続き貧血改善作用を持たないカルバミル化EPOを投与し、小動物SPECTを用いた可視化研究によりEPOならびにその受容体の病態での動態とその意義について検討を進めていく。平成28年度は最終年度にあたり、EPO-EPORを介した糖尿病性臓器合併症の機序、ことに炎症制御機構の解明を目指して研究に邁進する。さらに、国内、国際会議における会議等の密接な交流により、本研究課題の取組みへの緊密な関係を構築、維持、発展させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった試薬が、平成27年度に納入できなかっため。
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次年度使用額の使用計画 |
購入予定であった試薬を購入する予定である。
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