研究課題
増加の一途をたどる糖尿病により、腎症はじめ全身の臓器合併症が生じる。この臓器合併症のひとつである糖尿病性腎症は新規透析導入原疾患の第1位であり、その克服が期待されている。本研究は、腎症など臓器合併症、生命予後に重要な貧血に関連し、かつ腎臓から産生されるエリスロポエチン(EPO)に注目した。これまで我々は新規のエリスロポエチン受容体(EPOR)阻害作用を有する抗EPOR抗体を同定した。最近になり、本抗体と全身性エリテマトーデスの臓器病変との関連を報告した(J Rheumatol 2016)。本研究では、EPO-EPORを介する臓器合併症の機序解明を目指し、糖尿病臓器合併症の共通進展機序である炎症、線維化に着目した。ヒト培養血管内皮細胞を用いてEPO投与有無による網羅解析とそこから得られた特異的な共通応答分子とその障害機構を検討した。新たなパスウェイとしてthioredoxin interacting proteinなどインフラマゾーム活性化につながる経路を同定した。一方、EPO投与により生体環境のホメオスターシス維持に関与する遺伝子の発現亢進、炎症シグナルの低下を確認している。最終的に炎症性サイトカイン発現の低下を確認した。また、EPOシグナルが自身のレセプターの発現に関与し、高糖刺激による細胞障害を抑制していることを示した。糖尿病性腎症では、慢性炎症から腎線維化へと進展し、慢性腎不全へと至る。これまで腎などの臓器線維化に関与することを報告してきた骨髄由来細胞fibrocyte(PNAS2006)を用いて、EPOの役割を検討した。その結果、炎症に続く、線維化の過程においても、EPOシグナルが病態へ関与することを明らかにした。これらの結果より、EPOはその受容体を介して、炎症、線維化カスケードの制御を行い病態に影響を与えている可能性がある。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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