研究課題
生体は生命が脅かされるなど特殊な状況において、闘争や逃避を可能とすべく意識や覚醒レベルを高め、同時に痛みを中枢性に完全に遮断する。このヒトや動物に普遍的にみられる生体の重要な防御システムを明らかにするために、下行性痛覚抑制系の1つであり、且つ、意識の調節にも重要な役割を果たすノルアドレナリン神経に着目した。光遺伝学的手法とin vivoパッチクランプ法などを組み合わせ、その抑制機構の詳細を明らかにする研究を遂行してきたが、今年度は慢性疼痛を発症するモデル動物を用いた解析を主に行い、以下のことが明らかとなった。触刺激や温度刺激により逃避行動を呈する神経障害性モデル動物を作製した。これらのモデルでは触刺激や温度刺激など非侵害性の刺激に対する逃避行動の閾値が正常に比べて低下する異痛症が観察された。このモデルに対するノルアドレナリン神経を介した効果に可塑的変化が見られ、特に痛みの抑制作用に変化が生じた。モデル動物では脊髄における非侵害性の刺激に対する活動電位の発火が異常に持続した。この持続性の応答に対し、ノルアドレナリンは抑制作用を示し、その鎮痛効果はα1やα2受容体を介し、β受容体は介さなかった。一方、正常ではα2受容体を介した抑制効果が高かった。行動薬理学的解析においてもモデル動物で同様にα1やα2受容体を介した抑制作用が観察された。これらの結果は、異痛症など非侵害性刺激に対する下行性抑制系に可塑的変化が生じることを示した。特にα1受容体を介した作用は青斑核ニューロンの賦活化に伴って脊髄GABAニューロンが賦活化されることから、異痛症などの慢性疼痛の鎮痛には下行性抑制系をα1受容体を介して増強することが重要であると示唆された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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