研究課題/領域番号 |
26293134
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
増谷 佳孝 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (20345193)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 拡散MRI / 脳白質線維束 / モデリング |
研究実績の概要 |
生体内水分子の3次元的な拡散現象の計測に基づき生体構造の推定が可能である拡散MRIデータを用いて行う本研究の目的は、次の3点である。(1)生体内の大域~局所~微細構造をマルチスケールで扱う新しい統合モデルの構築、(2)統合モデルのパラメタを頑健かつ高速に推定する計算手法の確立、(3)統合モデルのパラメタ群の組み合わせによる新しい診断情報の創出のための基礎的検討 H27年度においては(1)および(2)を中心に行い、特に神経線維軸索サイズをパラメタとして有するモデルおよびその実データ(正常ボランティアデータ)に対する適用を検討した。具体的には、Zhou-Laidlawのモデルを応用し、拡散テンソルによって定義される線維方向に垂直な方向の1次元Q空間の再構成により実データでの神経線維軸索径の推定を行うことができた。ファントム実験による誤差評価に加えて、実データでは解剖学的に知られる10マイクロメートル付近の軸索径を得ることができ、モデルおよび手法の実行可能性を示した。本成果は、日本医用画像工学会他にて発表予定である。 また、Structured Sparsityを用いた線維交叉部を含めた全体構造の滑らかさかさを保証する正則化法についても検討を行った。本手法を含め、全体モデルへの適用に関しては今後の検討課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的に従って、おおむね計画通りに研究は進展していると言える。また、別予算で購入した実験用MRIが導入され、本研究の実データ(模型、標本など)による検証に活用することができるため、より一層の進展が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度では、研究目的の(3)を中心課題としつつ、残された課題についても取り組むこととする。具体的には、以下の2点である。 ・大域~微小構造までを網羅する統合モデルの完成 ・統合モデルパラメタによる新しい診断情報の創出に向けた正常・異常間の差異の検討 前者については、これまでに提案されている拡散MRIの各ボクセルにおける信号値モデル、および特定の線維束構造のモデルを統合し、従来にない新しい統合モデルを完成する。具体的には、従来の線維追跡手法による神経束構造抽出法およびその結果を利用するが、その改良や新手法の検討も行う。 後者については、現在までに検討した各種モデルで得られるパラメタは、局所すなわち各ボクセルで得られる拡散パラメタ(拡散係数、拡散異方性、拡散尖度など)、および微細構造を表すパラメタである軸索径と線維方向のばらつきに加え、これらの空間微分である。また、特定の神経束構造内でのこれらの統計値も大域情報として加わる。以上の組み合わせにより、新しい診断情報を創出することが本研究の最終目標であるが、様々な疾患によって適した組み合わせは異なると思われる。よって、これらのパラメタを特徴量と考え、特定の疾患において正常・異常間を最も分離するような組み合わせを検討することとし、機械学習・パターン認識のアプローチ法を採用する。対象となる疾患については脳白質に関連する疾患を複数検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
収集したデータの量が既存のファイルサーバーへ収容できたため、購入予定だったファイルサーバーの単体での購入を見送り、次年度に購入予定のワークステーションの一部(オプション)として購入することとしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に購入予定のワークステーションの一部(オプション)として購入するために使用する。
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