研究課題/領域番号 |
26293137
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
齋藤 則生 独立行政法人産業技術総合研究所, 分析計測標準研究部門, 副研究部門長 (80344191)
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研究分担者 |
清水 森人 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 分析計測標準研究部門, 研究員 (20613988)
田中 隆宏 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 分析計測標準研究部門, 主任研究員 (30509667)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 粒子線治療 / 水吸収線量 / 線量標準 / カロリメータ |
研究実績の概要 |
平成26年度は、放射線医学総合研究所のHIMACの共同利用実験を行い、炭素線の線質測定を行うとともに、グラファイトカロリメータを完成させ、水カロリメータの設計製作を行った。 粒子線の線質測定については、炭素線のエネルギー135 MeV/nと290 MeV/nの2種類について、深度線量分布の測定を、水ファントム中とグラファイトファントム中の両方で行った。深度線量分布の測定には、自作のグラファイト電離箱を用い、電離箱の性能評価も同時に行った。水ファントムとグラファイトファントムで、ブラッグピークの位置が異なった。これは、水とグラファイトの阻止能比の違いを反映しているものと考えられる。また、グラファイトカロリメータの受光部は直径20 mmと比較的大きいため、照射野内の不均一性の評価が必要となる。そこで、水ファントム中で容積の小さい指頭型電離箱を二次元スキャンし、不均一性の評価を行った。その結果、無視できない程度の不均一性があり、補正が必要であることが分かった。 グラファイトカロリメータを完成させ、炭素線を用いて、その動作確認を行った。その結果、炭素線の照射によりグラファイトカロリメータの受光部の温度が上昇することを確認した。しかし、SN比の改善が必要であることなどの問題点も確認した。 水カロリメータについては、水カロリメータを設計し、断熱水槽と冷却システムを製作した。断熱水槽は高性能ウレタンフォームによって囲い、温度の安定性は0.01 K程度であることを確認し、温度の安定性と断熱効果は十分であることが分かった。 今後はモンテカルロシミュレーションで深度線量分布の再現、補正係数の導出を行いつつ、グラファイトカロリメータによる熱量測定、水カロリメータの開発などを行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の計画は、粒子線の線質測定、グラファイトカロリメータの完成、水カロリメータ設計製作であり、おおよそ達成した。それぞれの具体的内容については以下の通りである。 粒子線の線質測定について、計画では、水ファントムとグラファイトファントムについて、電離箱を用いて粒子線の深さ方向の線量分布を測定することであった。実際には、炭素線のエネルギー135 MeV/nと290 MeV/nの2種類について深度線量分布の測定を行い、さらに照射野内の不均一性の評価も行い、計画以上の進捗がある。 グラファイトカロリメータの完成については、装置を製作し、動作確認をCo-60γ線と医療用リニアックを用いて、現有のグラファイトカロリメータと比較を行うことであった。実際には、装置を製作し、計画にはなかった粒子線を用いて動作確認を行ったが、Co-60γ線と医療用リニアックを用いた動作確認は行わなかった。若干予定と異なったが、動作確認を行っているため、おおむね順調に進展している。 水カロリメータ設計製作に関しては、設計を完了し、断熱水槽と冷却システムを構築することであった。実際には、設計を完了し、断熱水槽と冷却システムを製作し、温度が安定に制御できるか動作確認まで行った。したがって、順調に進展している。 以上のことより、全体として概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
粒子線の線質測定では、拡大ブラッグピークにおける深さ方向の線量分布を測定するとともに、モンテカルロ計算による再現を試みる。 グラファイトカロリメータについては、SN比が向上するようにノイズ対策などを行い、調整を行う。その後、再度、炭素線を用いて動作テストを行い、安定して粒子線を測定できるかどうかテストを行う。 水カロリメータについては、受光部のガラス容器を製作し、サーミスタを接続して、温度測定ができるかどうか動作テストを行う。さらに、窒素や水素で飽和した水をガラス容器に封入出来るようなガス浄化システムを製作する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に用いる電気部品を既存の部品で代用することができたため、経費を少し節約することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
本経費は、次年度に製作予定の水カロリメータの受光部を複数製作する費用の一部として使用する。
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