研究課題
本研究は、佐賀市民約12,000人のコホート研究により、加速度計で計測した身体活動量と末梢血DNAメチル化の関連を検討する。また、身体活動量と循環器疾患・がんなどの生活習慣病罹患の関連を検討し、その介在因子としての候補遺伝子メチル化と炎症マーカー(高感度CRP)の寄与度を推定する事を目的とする。具体的には、以下の通りである。①ベースライン調査の横断研究により、身体活動量と末梢血DNAメチル化(ASC遺伝子などの候補遺伝子)の関連を検討する。②ベースライン調査と5年後調査の縦断研究により、身体活動量の5年間の変化が候補遺伝子メチル化の変化および高感度CRPの変化と関連しているかどうかを検討する。③コホート研究により、強度別の身体活動量および高感度CRPと循環器疾患・がん罹患の関連を検討する。また、症例コホート研究により、候補遺伝子メチル化と上記疾患罹患の関連を検討し、上記疾患の介在因子としての候補遺伝子メチル化と高感度CRPの寄与度を推定する。2015年度はASC(apoptosis-associated speck-like protein containing a caspase recruitment domain)遺伝子プロモーター領域の7カ所のメチル化測定をベースライン調査参加者2295名まで拡大し、この内5年後調査にも参加した1631名について同様の測定を行って、縦断的検討を実施した。この結果、総身体活動量の変化が男性においては3カ所、女性においては5カ所のメチル化の変化と有意な正の相関を示した(Spearman順位相関係数0.1前後、P < 0.05)。また、女性においては、特に低強度の身体活動量の増加が上記メチル化の増加と関連することを見出した。
3: やや遅れている
候補遺伝子メチル化(ASC遺伝子)の検討についてはほぼ予定通りに進行した。しかし、全ゲノムのメチル化と身体活動量の検討による新たな候補遺伝子の探索については、測定は完了したがデータを解析するまでに至らなかった。
全ゲノムのメチル化と身体活動量の関連を検討する事により、まだ報告されていない新たな候補遺伝子を見出したいと考えている。また、コホート研究により、強度別の身体活動量および末梢血ASC遺伝子メチル化が循環器疾患(最終年度には脳梗塞を対象)に与える影響を検討すると共に、身体活動量と脳梗塞発症の関連にASC遺伝子メチル化および炎症マーカー(CRP)がどの程度介在しているかを検討したい。
候補遺伝子メチル化の測定を複数の遺伝子に見込んでいたが、実際はASC遺伝子プロモーター領域の単独の検討となったため。
新たな末梢血DNAメチル化の測定費用(DNAメチル化アレイによる測定、新たな候補遺伝子メチル化測定などに必要な試薬・実験器具など)として使用する予定である。
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