研究課題
本年度は、これまでに得られた候補遺伝子群にこだわらず、もう一度最初から網羅的な解析をやり直すこととした。昨年度までに得られた放射線被ばく甲状腺癌症例56例、コントロール(癌症例と同様に汚染地域に住んでいた同年齢の人々、癌の発症なし)55例のエクソーム解析データについて、近年様々な公開データベースが拡充されているので、それらを取り込む形で解析パイプラインの見直しと再解析を行った。具体的には、得られたvariantに機能的なアノテーションを行うため、多数のannovar用のフィルターを導入した。特にタンパク質のアミノ酸置換により、病的変異となるスコアを予測するSHIFTやPolyPhen等のデータベースを中心に用いた。さらにdbSNPの情報や他の健常人エクソームのデータも更新・追加し、全体的なアップデートを行った。また、GATKのdepth of coverageを用いたxhmmによるcopy number variation (CNV)の計算も行った。CNV解析によって欠失がある部分も遺伝子を抽出し、SNVリストに加えた。再解析によって得られたvariantを使い、Gene Ontology Enrichment Analysisを施行したものの、明らかに変異が集積している機能群は得られなかった。近年の遺伝性疾患のエクソーム解析例でも、約2/3は変異が同定できないことより、全ゲノムシークエンスの必要性を考え、20例の放射線被ばく甲状腺がん症例、10例のコントロールサンプルを用い、全ゲノムシークエンスを行った。全ゲノムシークエンス用にパイプラインを改変し、今後詳細な解析を行う。
3: やや遅れている
同定された標的遺伝子群は、有意差はあるものの一部の症例にしか見つからず、解析手法の拡充によってもそれはあまり変わらなかった。よって、機能解析には移行せず、もう少し網羅的な解析を加えることとした。
今後は、全ゲノムシークエンスと、さらに様々な機能データベースを取り入れ、機械学習も導入して責任変異を同定していく。
他の研究助成金のサポートも受けたことによる。
全ゲノムシークエンス等の網羅的解析数の増加を計画している。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件)
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