研究課題
癌や循環器疾患などの生活習慣病は遺伝的要因と環境要因が互いに影響することにより発症する。その関連に重要な役割を果たすとして注目されているのが、遺伝子発現を調節する仕組みエピジェネティクスである。代表的なエピジェネティクスの機構の1つにDNAのメチル化がある。DNAメチル化は主に遺伝子のプロモーター部分のCpG islandであり、この部位のメチル化レベルが高いと転写が阻害され、遺伝子は不活性となる。白血球DNAのメチル化異常は、様々な組織(細胞)で生じているメチル化異常を反映している可能性が示唆されているが、疫学分野において一般住民を対象としたエピジェネティクスの観点からの科学的エビデンスはいまだ乏しい状況にある。ゲノム全体のメチル化レベルを知る有用なマーカーであるlong interspersed nuclear element-1 (LINE-1)に着目し、平成2~3年および平成26~27年の住民健診受診者を対象として白血球DNAのLINE-1DNAメチル化レベルの測定を行い、白血球DNAメチル化レベルデータとベースライン時の健診・アンケート調査から得られたデータをまとめ、データベースの作成を行い、横断的・縦断的な解析を進めている。横断的な解析により、メタボリックシンドローム、高脂血症及び高血糖と白血球DNAメチル化レベルと関連を認めた。高血糖者ではLINE-1DNAのメチル化レベルが有意に低く、高脂血症及びメタボリックシンドロームの者ではLINE-1DNAのメチル化レベルが有意に高かった。また縦断的な調査により、ベースライン時のLINE-1DNAのメチル化レベルの高値者はがん死亡率が有意に高い結果を得た。今後はLINE-1DNAメチル化率と各死因との関連及びLINE-1DNAメチル化レベルの経年変化についてさらに解析を進めていく。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016
すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)