研究課題
魚介類摂取は、環境由来の化学物質であるメチル水銀やポリ塩化ビフェニルなどの化学物質曝露を伴う一方で、DHAなどオメガ3脂肪酸といった児の成長と発達に有用と考えられる栄養素を取り込むこととなり、リスクとベネフィットの両面性を有すると考えられる。このため魚介類摂取の総合的な評価が必要と考えられ、生後7及び24ヶ月の子どもの発達指数をアウトカムとし、臍帯血DHAと出産時母親毛髪総水銀との関連性を比較した。対象者は、環境省が進めている子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)のフィールドを活用し、その追加調査として実施した。母親IQ、学歴、収入などの社会経済的条件、母親の喫煙習慣、飲酒習慣、母年齢、妊娠前BMI、出生体重、出産順位、児の性別、検査テスターなどの共変量を考慮した多変量解析の結果、DHAと発達指標との間に正の相関関係が観察され、臍帯血DHAが増えていくと、対象児の発達指数が高くなった。重回帰モデルに毛髪水銀を変数として加えると、メチル水銀曝露自体の負の影響は認められなかったものの、DHAと発達指標との関連性はさらに強くなる現象が観察された。一方で、3歳半でK-ABC IIを用いて実施したIQ検査では、臍帯血DHAや毛髪水銀値との間に統計学的な関連性は観察されなかった。以上から、DHAの栄養学的利点として、乳幼児の発達指標に対するDHAの栄養学的なベネフィットが示された。DHAの周産期における栄養学的な利点はこれまでにも海外で報告があり、日本人でもその知見が有効であると考えられた。今回の解析対象ではメチル水銀の負の影響は認められなかたものの、メチル水銀の高濃度曝露では負の影響もあると考えられるため、メチル水銀の汚染度が高い魚介類の摂取を避けつつ、DHAを摂取するため魚介類をうまく活用することが大切と結論された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Environmental Health and Preventive Medicine
巻: 22 ページ: 22
10.1186/s12199-017-0636-5