研究課題/領域番号 |
26293148
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
及川 伸二 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10277006)
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研究分担者 |
村田 真理子 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10171141)
山嶋 哲盛 金沢大学, 医学系, 研究員 (60135077)
冨本 秀和 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80324648)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / バイオマーカー / 血液 / タンパク質 / 早期診断法 / プロテオミクス / エキソソーム |
研究実績の概要 |
超高齢社会の到来により認知症の患者は2025年には700万人(高齢者の約5人に1人)まで増加すると予想されている。その中で、アルツハイマー病(AD)は、認知症の原因の約7割を占める進行性の神経変性疾患である。臨床的にADと診断された時には既に症状が進行しているため、ADを早期に発見し進行を遅らせることは非常に重要である。ADの診断にはPETやMRIが利用されているが、高額であるため早期のスクリーニング的手法としては不向きである。そこで低侵襲で簡便に利用できる血液や尿のバイオマーカーを利用した早期診断法が必要である。直径40-100nmの微小な小胞体であるエキソソームは神経細胞間の情報伝達に関わると報告されている。さらに疾患に関連する細胞から放出されたエキソソームは血液や尿など全身にも存在していることから、血液中のエキソソームに含まれるタンパク質にはADの進行と関係しているものがあると考えられる。本年度は、三重大学附属病院を受診した軽度AD患者と健康診断を受診した健常者の血漿からエキソソーム画分を回収した。次いで、エキソソーム画分からタンパク質を抽出し、それらの発現変動量を2D-DIGE(蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動)法により解析し、MALDI-TOF/TOF/MS(マトリクス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計)によってタンパク質を同定した。その結果、同定されたタンパク質のうち2つは、補体経路の調節に関与していた。ADでは補体経路の活性化が報告されていることから、エキソソーム中のこの2つのタンパク質の発現量の変化はADと関連し、バイオマーカーとして利用できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度は、三重大学附属病院を受診した軽度AD患者10名とJA三重厚生連いなべ総合病院健診センターを受診した健常者10名の血液からエキソソームを単離し、タンパク質を抽出した。その後、蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動を行い、軽度AD患者と健常者で有意に変動しているタンパク質スポットについて解析ソフト(DyCyder)を用いて解析した。その結果、電気泳動像が不鮮明な軽度AD患者1名を除き、軽度AD患者群でコントロール群に比べ発現量が増加したスポットは118個であり、減少したスポットは105個であった。これらのスポットのタンパク質を同定するため、二次元電気泳動後のゲルをCBB染色液で処理し、飛行時間型質量分析計で解析可能なスポットについて解析を行い、エキソソーム中のタンパク質を同定した。さらに、エキソソームの膜に特異的な抗体を用いて、ウェスタンブロッテング法にてエキソソーム画分を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、効率的なエキソソーム抽出法を確立し、ウェスタンブロッテング法や電子顕微鏡を用いてエキソソーム画分中のエキソソームを確認する。また、エキソソームの回収量を増加させ、酸化損傷タンパク質やmiRNAの発現量解析を行う。AD患者と健常者の採血を引き続き行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用期限が限られている消耗品は多量にストックしておけないため、その使用状況や輸入品の納入時期が3月末日に間に合わなかったことなどから、若干の未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
これらの消耗品は本研究に必要なため、未使用金は消耗品費として順次使用していく。
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備考 |
http://www.medic.mie-u.ac.jp/eiseigaku/
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