研究課題/領域番号 |
26293155
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研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
古野 純典 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 国立健康・栄養研究所, 研究所長 (70128015)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 栄養学 / 循環器・高血圧 / 社会医学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、地域住民コホート研究において、栄養素・食品群摂取および食パターンと動脈硬化性疾患リスクとの関連を系統的に検討し、健康的日本食の概念を構築することである。福岡市東区在住の49-76歳の男女12948名が参加した九州大学福岡コホート研究の2次調査データを活用して、食事パターンと冠動脈疾患イベント及び脳血管疾患イベントとの関連を検討した。ベースライン時点で解析対象疾患の既往を有していた者等を除外し、解析対象は約11,500名であった。平均5.3年の追跡期間の冠動脈疾患イベントは350例余り、脳血管疾患イベントは250例であった。統計解析では性別、年齢5歳階級、エネルギー摂取量(性別4等分類)等を調整した。29の食品群の主成分分析では3つの食事パターンが同定された。第1パターンは、野菜、果物、海藻、きのこ、大豆製品、魚および緑茶の高摂取で特徴づけられる食事パターン(健康食パターン)であった。第2パターンは、牛肉・豚肉、肉加工品、鶏肉、卵などの動物性食品の高摂取で特徴づけられた(高脂肪食パターン)。第3パターンは、パン、緑黄色野菜、野菜ジュース、果物ジュースおよびヨーグルトの高摂取で特徴づけられた(洋朝食パターン)。しかし、いずれの食事パターンも冠動脈イベントあるいは脳血管疾患イベントとの関連を示さなかった。もう一つの手法であるreduced rank regression(RRR)解析では、血圧、血清non-HDLコレステロールおよびHbA1cをリスク予測指標(応答変数)とした。最大で3つの因子が抽出されることになるが、これら3因子による変動の説明割合は食品群摂取に対して12%、応答変数に対して2%であった。応答変数に対する寄与度が小さく、各食品群の影響度もはっきりしなかったので、RRR抽出食事パターンと疾患リスクとの関連は検討を控えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおりに食事パターン解析をおこない、動脈硬化性疾患リスクとの関連を検討した。主成分分析で同定された3つの食事パターンはいずれも冠動脈疾患リスクあるいは脳血管疾患リスクと関連していなかったが、野菜、果物、海藻、きのこ、大豆製品、魚および緑茶の高摂取で特徴づけられた食事パターンは日本人の健康的な食事パターンとして注目される。RRRの解析結果を含め、論文投稿の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
食事パターンと動脈硬化性疾患リスクに関する学術論文を完成させ、学術誌掲載の作業を進める。本研究において示された健康的食事パターンの構成食品は、これまでにわが国において報告されている健康的食事パターンの構成食品に近いものであり、日本人の健康な食事の構築に資するものである。本研究の結果だけから、日本人の健康的食事パターンが動脈硬化性疾患リスクに関与していないと結論することは困難である。他の研究結果等を参考にして、最終的な結論を出す。平成28年度には、食事パターンと死亡リスクとの関連を検討する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿が遅れたので、計画していた英文校正、投稿掲載にかかる費用を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
論文の投稿掲載にかかる費用に充てる予定である。
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