研究課題
ABO式血液型抗原は赤血球や上皮細胞において発現している。遺伝子発現はプロモーターとエンハンサーからの調節を受ける。ABO遺伝子のプロモーターは細胞非特異的に機能するものであり、赤血球系細胞特異的エンハンサーは同定されている。1.上皮細胞において働くエンハンサーの探索;上皮細胞特異的エンハンサーを翻訳開始点下流22.6-kbに同定した。1)Genome BrowserにおけるDNaseI hypersensitive siteの検索、2)ChIP assayによるヒストン修飾の解析、3)プロモーターアッセイによるエンハンサー活性の証明、4)ゲノム編集を用いたエンハンサーの証明、5)上皮細胞特異的転写因子Elf5の結合の証明;バンドシフトアッセイ、ChIPアッセイ、ELF5ノックダウンアッセイ等を用いて証明した。2.血液亜型の原因となる塩基変異の探索;A3やB3型においてプロモーター内に変異を同定した。3.ABO式血液型の遺伝子診断方法を確立する;コード領域、プロモーター領域、エンハンサー領域の検索によりほとんどの亜型遺伝子が判定可能となった。
2: おおむね順調に進展している
赤血球系細胞をiPS細胞から作る試みは成功している。しかし、ABO式血液型抗原が発現しないことが判ってきた。そのため、iPS細胞からの分化・培養を用いた研究は中止となった。但し、本課題研究の骨子である、1.上皮細胞のエンハンサーの探索、2.未同定の血液亜型の原因となる塩基変異の同定、3.ABO式血液型の遺伝子診断方法の確立、等は順調に進展している。
最近のゲノム研究から、多数の転写調節領域がプロモーターに働き、転写制御に寄与していることが示されてきた。また、クロマチンがドメインを形成し、その中にある遺伝子の転写制御が遂行されていることも示されている。そのドメインの境界では特徴的な因子の結合が示されており、その特徴はABO遺伝子下流の+36.0-kb siteにも当てはまる。従って、+36.0-kb siteと赤血球系細胞特異的転写調節領域或いは上皮細胞特異的転写調節領域との関係をゲノム編集や転写因子のノックダウンアッセイを用いて調べる予定である。これらにより、ABO遺伝子の転写調節が統合的に理解できるようになると考えている。
すべて 2015
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Vox Sang.
巻: 108 ページ: 310-313
10.1111/vox.12216
巻: 108 ページ: 302-309
10.1111/vox.12220